2001 年 30 巻 2 号 p. 89-91
症例は18歳男性で, 交通事故受傷後当院に搬送された. 来院時血圧71/30mmHgでショック状態であった. 胸部X線で上縦隔の拡大と大動脈弓の不明瞭化を認め, 胸腹部CTで左血胸, 近位下行大動脈に仮性動脈瘤の形成, 頸部-縦隔-後腹膜腔に大量の血腫を認めた. 受傷2時間後に部分体外循環下に下行大動脈人工血管置換術を施行した. 下行大動脈はほとんど離断した状態であり, かろうじて壁側胸膜によって保持されていた. 術後経過は良好であった. 外傷性胸部下行大動脈破裂においては, 速やかな下行大動脈の止血・再建が必要と思われた. また診断, 治療方針の決定には, ヘリカルCTが有用であった.