日本心臓血管外科学会雑誌
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交叉性異所性癒合腎を合併した腹部大動脈瘤の1手術例
水野 友裕外山 雅章田渕 典之栗生 和幸加藤 全功
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2001 年 30 巻 2 号 p. 92-94

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抄録

腹部大動脈瘤に交叉性異所性癒合腎を合併した非常に希な症例を経験したので報告する. 症例は74歳, 男性. 他疾患に対する精査で左腎動脈下の腹部大動脈瘤, 両側総腸骨動脈瘤を指摘され, 手術適応と判断された. さらに右腎はなく, 交叉性異所性癒合腎と診断された. 術前血管造影では, 異所性腎への血流は腹部大動脈瘤から1本と, 右総腸骨動脈から1本の計2本が確認された. 手術所見では, 左腎動脈直下から動脈瘤変化が認められ, 奇形腎動脈は術前に確認されていた2本以外に瘤中央右側壁から径1mm程の細い動脈の計3本が流入していた. 人工血管置換にさいして, 腎保護のため奇形腎動脈へ冷却リンゲル液を灌流しつつ, 上下2本の腎動脈を再建した. 異所性腎虚血時間45分で術後腎障害はみられなかった. このような症例では, 奇形腎動脈は多様であり, 適切な腎保護下に再建することが重要と考えられた.

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