日本心臓血管外科学会雑誌
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左室瘤を合併した遠位弓部大動脈瘤に対する同時手術の1例
北野 育郎脇田 昇坂田 雅宏南 裕也川西 雄二郎
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2001 年 30 巻 2 号 p. 99-102

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抄録

症例は, 72歳の男性. 主訴は, 意識消失発作にて近医を受診. 症状軽快後に胸部CTが施行され, 大動脈遠位弓部に瘤状拡大が認められた. 遠位弓部の大動脈瘤は嚢状で, CT上最大径は55mmであった. また, 冠状動脈造影検査では左前下行枝#6が完全閉塞しており, 左室造影にて梗塞後左室瘤が認められた. 左室の拡張末期容積は285ml, 収縮末期容積は224mlと拡張し, 左室駆出分画も21%と著明に低下していた. 遠位弓部大動脈瘤に対しては全弓部置換術を, また術後の心不全の発症を考慮して, 左室瘤に対して左室縮小形成術いわゆる Dor 手術を同時に施行した. 術後の経過は良好で, 拡張末期容積が241ml, 収縮末期容積147mlと縮小し, 左室駆出分画も39%と左室機能の改善が認められた. 本邦では, 胸部大動脈瘤に, 左室瘤を合併した症例に対する同時手術の報告例はなく, 左室縮小形成術の適応も含め報告する.

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