抄録
症例は59歳男性.大動脈弁狭窄症の経過観察中にα-streptococcusによる感染性心内膜炎を合併,保存的治療では感染および頻回に発生する胸痛発作の制御が困難になり手術目的で当院に転院した.術前検査で,大動脈弁に疣贅の付着および圧較差80mmHgの大動脈弁狭窄,冠動脈造影にて右冠動脈#3に90%,左冠動脈#13に75%の有意狭窄を認めた.手術所見では右冠尖を中心に弁輪部膿瘍を形成しており,術前冠動脈造影は,術式の決定に重要な検査であったものの塞栓症を引き起こす危険性がきわめて高かったことが推察された.感染組織掻破・弁輪形成ののち,AVR(SJM-19mm)+CABG2枝を施行した.術後経過は良好で,約4週で退院となった.