日本心臓血管外科学会雑誌
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腹部大動脈瘤を越えて進展したStanford B型大動脈解離の1手術例
中田 弘子軸屋 智昭大坂 基男三井 利夫
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2002 年 31 巻 5 号 p. 350-352

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抄録
患者は72歳男性.腰痛で発症.CTにて動脈硬化性腹部大動脈瘤にStanford B型急性大動脈解離が合併したものと診断された.腹部大動脈瘤は腎動脈下に存在し,動脈解離は左鎖骨下動脈起始部直下から右総腸骨動脈に及び,腹部分枝はすべて偽腔から分岐していた.胸部最大径4.8cm,腹部最大径6.5cmであった.多発腎梗塞を認め右腎は無機能であった.まず腹部大動脈瘤に対する人工血管置換術を発症3ヵ月で施行した.瘤壁は動脈硬化が強く解離の及んだ部位は脆弱で腰動脈からの出血のコントロールに難渋,バイタルサインの維持が困難となり,中枢側および末梢側を閉鎖し右腋窩-両大腿動脈バイパス術に術式変更となった.今回われわれは,大動脈解離が腹部大動脈瘤を越えて進展したまれな1例を経験したので報告した.
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