日本心臓血管外科学会雑誌
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31 巻, 5 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 日比野 成俊, 土屋 幸治, 中島 雅人, 佐々木 英樹, 松本 春信, 内藤 祐次
    2002 年31 巻5 号 p. 321-324
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    80歳以上の超高齢者の腹部大動脈瘤に対する外科治療の特徴,合併症,手術成績,手術適応などについて検討した.1981年から2000年に当院で施行された腹部大動脈瘤に対する人工血管置換術を行った223例を対象とした.これらを手術施行時の年齢によって,80歳以上の群(O群)23例と80歳未満の群(Y群)200例に分け,術前,術後の合併症,手術成績などについて検討した.病院死亡率は待機手術症例のみでは両群とも0%であり,緊急手術症例のみではO群57.1%に対してY群6.1%と有意にO群のほうが高かった.緊急手術症例はY群(16.5%)に比べてO群(30.4%)のほうが有意に多かった.術前合併症では,腎機能低下,慢性閉塞性肺疾患,消化器系合併症はO群のほうが多かった.冠動脈病変,およびそれ以外の心血管系合併症は両群間で有意差はなかった.術後合併症では腸閉塞,肺炎,心血管系の合併症はO群で有意に多く,死亡例はいずれもこれらの合併症によるものであった.80歳以上の超高齢者の腹部動脈瘤に対する人工血管置換術は,待機手術については,ほかの年齢層と同様に安全に施行しうると考えられるが,緊急手術の成績は不良であり,早期発見,早期治療が成績向上のためには重要であると考えられた.
  • 当施設における11年間の症例
    田村 清, 中原 秀樹, 古川 仁
    2002 年31 巻5 号 p. 325-327
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    Stanford A型血栓閉塞型大動脈解離症例の治療方針に関して検討を行った.1989年から2000年4月までに当院に緊急入院した大動脈解離症例412例のうち血栓閉塞型16例(男:女=10:6,平均年齢64.3歳)を対象とした.経過観察中に再開通やulcer like projectionを認めたP群(n=6)と認められなかったR群(n=10)との2群間で経過中のCT所見および臨床経過をretrospectiveに比較検討した.入院時大動脈最大径はP群,R群それぞれで45.00±1.78:36.00±2.16mm(p=0.0182),解離腔最大径は8.00±0.00:4.00±0.40mm(p=0.0004)とP群で有意に高値を示していた.また,1ヵ月後のCT所見ではR群において有意な縮小傾向が認められた.入院時のCTで大動脈最大径>45mm,解離腔最大径>8mmの症例,経過中解離腔縮小が認められない症例は亜急性期の手術適応を考慮する必要があると考えられた.
  • 國友 隆二, 鶴崎 成幸, 森山 周二, 鈴木 龍介, 萩尾 康司, 高志 賢太郎, 外村 洋一, 川筋 道雄
    2002 年31 巻5 号 p. 328-330
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    心臓原発の悪性腫瘍は希な疾患であるが,その予後はきわめて不良である.教室で経験した心臓原発悪性腫瘍5例の手術および遠隔成績を検討した.術死は2例(40%)で,耐術者3例の平均生存期間は18.3ヵ月であった.遠隔の得られた症例では,経過中心不全症状を呈したものはなく,バイオプシーによる確定診断後化学療法を施行した1例は現在も再発なく生存中である.心臓原発悪性腫瘍に対する手術成績は不良で満足できるものではなかったが,経過中の心不全を予防し患者のQOLを改善させる点や,手術後の治療戦略を決定するうえで有用と思われた.
  • 山城 聡, 國吉 幸男, 宮城 和史, 下地 光好, 上江洲 徹, 新垣 勝也, 摩文仁 克人, 古謝 景春
    2002 年31 巻5 号 p. 331-336
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    1998年1月から2001年8月までに当科で施行したCABG274例中,術前血管造影検査にて左内胸動脈(LITA)使用不能と判断された7例(7/262=2.7%)を対象として検討した.全例男性で,平均年齢は68.6歳,4例が鎖骨下動脈閉塞あるいは狭窄,3例がLITA閉塞あるいは狭窄であった.3例でRITAに橈骨動脈を端側吻合しcomposite Y graftとして使用,ほかの3例で橈骨動脈をsequential graftとして使用し,バイパス枝数は2.7±1.0であった.グラフト開存率は94.7%(18/19)で,1例にPMIを合併したが,対症療法にて軽快しており,ほかの症例に合併症はなく全例軽快退院した.冠動脈疾患を有する患者は高脂血症,末梢血管病変を有することが多く,このような症例においてはLITAの動脈硬化が有意に高率に認められるとの報告も見受けられ,有茎動脈グラフトに対する術前の十分な検討が重要であると考える.
  • 大音 俊明, 増田 政久, 林田 直樹, ピアス 洋子, 中谷 充, 志村 仁史, 茂木 健司, 中島 伸之
    2002 年31 巻5 号 p. 337-340
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は41歳の女性で25歳時に不全型ベーチェット病の診断を受けた.31歳時左腎動脈分岐部に巨大な仮性動脈瘤が生じ,仮性瘤および腹腔動脈・上腸間膜動脈・左右腎動脈を含む胸腹部大動脈空置・解剖学的人工血管バイパス術が行われた.その10年後人工血管十二指腸瘻を生じ,人工血管を含む感染巣の完全切除と非解剖学的血行再建術を施行した.本症例では下腸間膜動脈が全腹腔内臓器に対する唯一の血流供給源となっており,術中広範な臓器虚血の生ずる可能性が危惧された.そこで腹腔内臓器虚血の指標として肝静脈血酸素飽和度の持続モニタリングを行い,安全に手術を行うことができた.ベーチェット病に伴う血管病変では遠隔期に仮性瘤を生ずることも多く,また非解剖学的再建術では大動脈断端が盲端となるため,今後とも注意深い経過観察が必要と思われた.
  • 高野 信二, 河内 寛治, 浜田 良宏, 中田 達広, 吉川 浩之, 角岡 信男, 中村 喜次
    2002 年31 巻5 号 p. 341-343
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は84歳,男性.腹部腫瘤を主訴に当科へ紹介された.既往歴として17年前に,腹部大動脈-左外腸骨動脈バイパス術を施行されていた.腹部CT,血管造影にて,中枢側および末梢側の両側吻合部巨大仮性動脈瘤と診断し,Yグラフト人工血管バイパス術を施行した.中枢側吻合部動脈瘤は7×6×5cm,末梢側吻合部動脈瘤は15×10×10cmであり,吻合部の離断が原因と思われた.中枢側,末梢側の両側吻合部に生じた巨大仮性動脈瘤はまれであると思われた.
  • 河内 寛治, 中田 達広, 浜田 良宏, 高野 信二, 角岡 信男, 中村 喜次, 堀内 淳, 宮内 勝敏, 渡部 祐司
    2002 年31 巻5 号 p. 344-346
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    上行大動脈がporcelain aortaを呈したAVR,CABG,腹部大動脈瘤手術の心臓・大血管系の3同時手術を施行した.73歳女性で,左室-大動脈圧較差60mmHgを示し,RCAの4A-V枝に90%の狭窄を認めた.大動脈弁および上行大動脈の著しい石灰化を認め,腹部に5cmの壁在血栓を伴うAAAを認めた.手術はAVR,CABG,AAAの3同時手術を施行した.CABGのグラフトは大動脈での吻合のない右胃大網動脈を用いた.送血管は上行大動脈より行い,右房脱血にて体外循環を開始した.石灰化のない大動脈より心筋保護(CP)液を注入,大動脈遮断して,AVR施行した.冠動脈入口部の石灰化のために,選択的にCP液を注入することは難しく,大動脈切開部の石灰を除去し縫合閉鎖してから大動脈より注入した.ついでRGEAとRCAの吻合を行い,大動脈遮断解除し体外循環を終了し,AAAの人工血管置換術を行った.翌日抜管でき,現在NYHA1度で経過している.
  • 中村 喜次, 安藤 太三, 田鎖 治, 荻野 均, 佐々木 啓明, 花房 雄治, 北村 惣一郎
    2002 年31 巻5 号 p. 347-349
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    患者は59歳,男性.突然の上腹部痛で発症.CTでA型急性大動脈解離と診断した.解離は上行大動脈から腹部大動脈まで存在し,中等量のpericardial effusionを認めた.収縮期血圧90mmHgと心タンポナーデの症状を呈しており,腹部所見の存在と合わせて緊急手術の適応と判断した.胸骨正中切開し,心嚢内血腫を除去した.経食道エコーでエントリーは弓部に存在したため脳分離体外循環下に上行弓部置換を施行した.体外循環を離脱し,止血を確認後,試験開腹した.小腸は色調不良で分節的に壊死に陥っていたため,Treitz靱帯より50cm肛門側から4.5mにわたり広範囲小腸切除し,残存小腸を端々吻合した.なお上腸間膜動脈へのバイパスは解離が末梢まで及んでいたため断念した.術後20日目,人工呼吸器を離脱.術後25日目,経口摂取を開始した.以後は順調に回復し,術後76日目に退院した.
  • 中田 弘子, 軸屋 智昭, 大坂 基男, 三井 利夫
    2002 年31 巻5 号 p. 350-352
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    患者は72歳男性.腰痛で発症.CTにて動脈硬化性腹部大動脈瘤にStanford B型急性大動脈解離が合併したものと診断された.腹部大動脈瘤は腎動脈下に存在し,動脈解離は左鎖骨下動脈起始部直下から右総腸骨動脈に及び,腹部分枝はすべて偽腔から分岐していた.胸部最大径4.8cm,腹部最大径6.5cmであった.多発腎梗塞を認め右腎は無機能であった.まず腹部大動脈瘤に対する人工血管置換術を発症3ヵ月で施行した.瘤壁は動脈硬化が強く解離の及んだ部位は脆弱で腰動脈からの出血のコントロールに難渋,バイタルサインの維持が困難となり,中枢側および末梢側を閉鎖し右腋窩-両大腿動脈バイパス術に術式変更となった.今回われわれは,大動脈解離が腹部大動脈瘤を越えて進展したまれな1例を経験したので報告した.
  • 手塚 康裕, 小西 宏明, 三澤 吉雄, 布施 勝生
    2002 年31 巻5 号 p. 353-355
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    患者は53歳の男性で腰痛と呼吸困難を主訴として来院した.心エコー図検査と腰部MRI検査で感染性心内膜炎による僧帽弁閉鎖不全・化膿性脊椎炎と診断された.化膿性脊椎炎はペニシリン系抗生剤,アミノグリコシド系抗生剤投与による保存的療法により軽快したが,利尿剤などの投与によっても心不全が軽快せず僧帽弁置換術を施行した.術前の動脈血や切除弁培養で起因菌を同定することができなかったが,セフェム系抗生剤の投与を術後6週間行った.術後18ヵ月の現在脊椎炎などの再発はみられず,経過順調である.
  • 濱本 浩嗣, 宮本 伸二, 穴井 博文, 迫 秀則, 岩田 英理子, 重光 修, 葉玉 哲生
    2002 年31 巻5 号 p. 356-358
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    遊離球状血栓症は希な疾患であり,とくに僧帽弁置換術後の報告は少ない.症例は58歳,男性.1981年に僧帽弁置換術を受けていた.貧血の精査で出血性胃悪性腫瘍を発見され,抗凝固療法を中止された.当科紹介時に左心耳内に血栓を認めたが,人工心肺中の胃癌からの出血が危惧され,まず胃全摘術を施行された.術後腸閉塞,誤嚥性肺炎,人工呼吸器装着を契機に左心耳内の血栓がはずれ,遊離球状血栓となったが緊急手術により救命しえた.遊離球状血栓の発生機序はいまだ明確ではないが,今回,左心耳より遊離する過程を観察し,その発生機転を確認できた僧帽弁置換術後の左房内球状血栓の1例を経験したので報告する.
  • 松本 春信, 進藤 俊哉, 明石 興彦, 窪田 健治, 小島 敦夫, 石本 忠雄, 伊従 敬二, 小林 正洋, 多田 祐輔
    2002 年31 巻5 号 p. 359-362
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    腹腔動脈瘤は希な疾患であるが,破裂した後の手術では高率に死亡する.したがって破裂前に発見した場合は,無症状であっても手術による治療が必要である.今回われわれは腹腔動脈瘤に急性大動脈解離を発症した1例を経験したので報告する.症例は60歳男性.人間ドックで偶然腹腔動脈瘤を指摘され当院紹介となった.精査にてIIIB型大動脈解離を合併した腹腔動脈瘤(最大径3cm)と診断し手術を行った.術中所見では腹腔動脈瘤は大動脈分岐起始部から瘤状に変化しこれに連なる脾動脈瘤も存在した.腹腔動脈瘤を試験的に遮断すると固有肝動脈の拍動は良好であったため,血行再建は不要と判断し動脈瘤の切除のみ施行した.術後-過性に肝機能障害を認めたがそれ以外に合併症もなく術後第24病日に退院となった.本症例のように,上腸間膜動脈を経由した肝への血流が十分保たれていれば腹腔動脈の血行再建は必ずしも必要ではないと思われた.
  • 佐々木 康之, 磯部 文隆, 衣笠 誠二, 岩田 圭司, 文元 建宇, 加藤 泰之, 有元 秀樹, 秦 広樹
    2002 年31 巻5 号 p. 363-366
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性で8年前に施行された腹部大動脈瘤(AAA)に対する人工血管置換術中枢側吻合部の仮性動脈瘤に大量の下血を合併し緊急入院となった.腹部CTで中枢側吻合部に7.0cm大の仮性動脈瘤を認め,胃カメラでは十二指腸下行部までに出血源は認められず,仮性動脈瘤の十二指腸水平部への穿破と診断し緊急手術を施行した.Spiral positionとし,胸腹部大動脈瘤のapproachで仮性動脈瘤を露出した.中枢側吻合部が全周にわたり離断され仮性動脈瘤が形成されていた.新しい人工血管で腎動脈直下腹部大動脈と古い人工血管との間にinterpositionした.十二指腸水平部で仮性瘤と瘻孔を形成しており,穿孔部を小腸パッチにて修復した.術後経過は良好で,術後14ヵ月現在感染の所見なく経過している.本邦においては,AAA術後の中枢側仮性動脈瘤の十二指腸への穿破例に対する手術報告例は少なく報告した.
  • 山根 健太郎, 濱脇 正好, 橋詰 浩二, 西 活央, 江石 清行
    2002 年31 巻5 号 p. 367-370
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    左側下大静脈を伴った腹部大動脈瘤破裂を経験したので報告する.症例は74歳男性,主訴は腹痛および意識消失発作.腹部造影CTにて破裂性腹部大動脈瘤と診断し,緊急手術を行った.術中,通常左腎静脈の存在する高さに大動脈前面を乗り越える大きな静脈を認め,左側下大静脈と診断した.中枢側吻合にさいして,左側下大静脈を慎重に剥離,授動することで,安全に人工血管置換術を施行することができた.術後に急性腎不全となり,9日間の持続血液濾過透析を要したが,腎機能は徐々に改善し,術後46日目に軽快退院となった.下大静脈の奇形は希ではあるが,腹部大動脈の手術,とりわけ緊急例においては,思わぬ血管の損傷などを起こさないためにも,外科医は常にその可能性を念頭において手術に臨む必要がある.
  • 石山 智敏, 稲沢 慶太郎
    2002 年31 巻5 号 p. 371-373
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は54歳の男性.1999年6月9日,ライトバンを運転中にガードレールに衝突し,ハンドルなどによる腹部打撲および胸椎圧迫骨折などの診断で当院整形外科に入院した.受傷後12日目の腹部CT検査で腹部大動脈狭窄と左総腸骨動脈閉塞を認めたため,外科紹介となった.7月12日に大動脈-両側総腸骨動脈バイパス術を施行した.左総腸骨動脈は血栓閉塞をきたしていた.比較的希な症例ではあるが,腹部鈍的外傷患者診察のさいには注意が必要と思われる.
  • 保浦 賢三, 岡本 浩, 大原 康壽, 湯浅 毅, 川口 レオ
    2002 年31 巻5 号 p. 374
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
  • 岡野 高久, 佐藤 伸一, 神田 圭一, 坂井 修, 蔦田 泰之, 夜久 均, 北村 信夫
    2002 年31 巻5 号 p. 375
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
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