抄録
僧帽弁膜症を伴う徐脈性心房細動症例のなかには僧帽弁手術により徐脈の改善を認める症例もあり,今のところこのような症例でのペースメーカー植え込み手術(PMI)の適応に一致した見解はない.今回,術前から徐脈性心房細動を認め,開心術中に永久心筋電極を装着した24例を術後PMIなし(N群)と術後PMIあり(P群)に分け,さらにP群をP1群(開心術中),P2群(経過観察中)として,術後PMIの指標および徐脈性心房細動に対する僧帽弁手術の意義を検討した.P群では術前のNYHA,両心房圧,心房細動歴がN群に比べ有意に大きく,また,開心術後の著明な左房負荷軽減は徐脈改善に寄与するケースが多かった.以上より,心房細動の徐脈化には慢性的な心房負荷の影響が強く,徐脈化を防止するには弁手術による速やかな心機能回復に努めることが重要と思われた.また,術後PMIの適応を判断するさいには術前の循環動態のほか,僧帽弁術後早期における心機能改善度の評価が必要と思われた.