抄録
心筋電極縫着術では胸骨正中切開や剣状突起下切開などを必要とするが,われわれは左側小切開第五肋軟骨切除での心筋電極縫着術を1980年から2001年まで33例に行い,その方法および経過を検討した.手術は仰臥位で約6~8cmの皮膚横切開を第五肋間胸骨左縁におき,第五肋軟骨部を約5cm切除し右室前壁に心筋電極を縫着した.ペースメーカー本体は原則として上腹部皮下に植込んだ.左側第五肋軟骨切除で視野の得られなかった7症例では複数の肋軟骨切除を要した.電極縫着部位は右房壁6例,左室壁5例,右室壁28例であり,手術時間は平均150分,出血量は平均82mlであった.現在まで最長258ヵ月の術後追跡期間中,合併症として脳梗塞を1例に,小児期縫着例でのペーシング不全を1例に認めた以外は良好な結果であった.本法は心筋電極縫着術に対する一つの到達経路と考える.