抄録
大動脈炎症候群に伴う冠動脈病変で,左冠動脈主幹部病変を伴うことはしばしばみられるが,これに対する冠動脈バイパスを含めた手術成績は,いまだ安定した成績が得られていない.症例は,左冠動脈主幹部(LMT)の完全閉塞をきたした大動脈炎症候群の39歳,女性.手術は,先端にカフ付きのカーボンコーティングを施したPTFE人工血管(Distaflo)を用いて,大動脈からLMTにかけて,大きく血管拡大形成術を行い,左冠動脈の良好な血流を得ることができた.術直後,半年後の造影検査でも良好な開存性を得ることができ,患者は順調に社会生活に復帰できた.本疾患の手術術式について,若干の文献的考察を加え検討したので報告したい.