日本心臓血管外科学会雑誌
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開心術後胸骨偽関節に対し鎖骨切除を施行した1例
澤田 康裕田中 啓三駒田 拓也片山 芳彦庄村 赤裸
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2005 年 34 巻 1 号 p. 63-66

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抄録

症例は72歳,女性.1954年右肺上葉切除術,右胸郭形成術,2001年12月大動脈弁置換術を施行されワーファリン内服中であった.2002年6月嚥下困難を認め,胸部X線像,胸部CTなど施行した.胸骨偽関節と診断され,手術施行となった.胸部CT上胸骨上端のみが限局性に偽関節となっており,胸骨後面に無名動脈,上行大動脈の癒着を認めたため剥離は困難と考え,内固定はあきらめ,胸鎖関節より胸鎖関節面を含め鎖骨切除を施行した.術後は症状が軽快し退院したが1ヵ月後手術創血腫より出血を大量に認め救急外来受診し緊急手術を施行した.鎖骨下動脈分枝より出血を認めそれを止血し,鎖骨断端が不安定で鎖骨切除が不十分なため鎖骨切除端により右鎖骨下動脈分枝を損傷したと考えられ,鎖骨を追加切除した.以後問題なく症状も軽快した.本症例のように限局的に胸骨上端に偽関節を認める症例では鎖骨切除が有用な治療となりえたが,鎖骨切除のさい靭帯の温存,靭帯の再建,鎖骨切除の範囲を十分に考慮すべきであった.

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