日本心臓血管外科学会雑誌
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心筋梗塞後前外側乳頭筋断裂に対し,経皮的冠状動脈形成術後に僧帽弁置換術を行い救命しえた1例
桑田 俊之水口 一三亀田 陽一森 透
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2005 年 34 巻 2 号 p. 144-147

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抄録
症例は72歳,女性.平成14年5月20日ころから胸部不快感を自覚していた.27日夜中より胸部不快感に加え呼吸困難も出現したため,救急受診された.来院時,血圧60mmHg台のショック状態であり,CPKの上昇(1,751IU/l)および心臓超音波検査にて4/4度の僧帽弁閉鎖不全を認めた.気管内挿管および大動脈内バルーンパンピング駆動下に冠状動脈造影(CAG)を施行し,回旋枝の完全閉塞を認めたため,手術準備を行いながら経皮的冠状動脈形成術(PCI)を行った.ひき続き胸骨正中切開,右側左房切開でアプローチ,僧帽弁は前外側乳頭筋が完全断裂しており,St. Jude Medical®弁(27mm)で僧帽弁置換術(後尖温存)を施行した.術後経過は良好で,術後27日目に退院となり,現在外来にて経過観察中である.乳頭筋断裂の中でも前外側乳頭筋断裂は発生が希であるが,左冠状動脈系の心筋梗塞が原因であることから術前にCAGを行い,できる限り早期の僧帽弁置換術の施行と必要に応じて術前PCIまたは同時冠状動脈バイパス術(CABG)を考慮すべきであると思われた.
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