日本心臓血管外科学会雑誌
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梅毒性大動脈炎に伴う左冠動脈入口部狭窄および大動脈弁閉鎖不全に対する1手術経験
新鮮自己心膜を用いたsurgical ostial angioplasty
大岡 智学牧野 裕村上 達哉
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2006 年 35 巻 3 号 p. 155-159

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抄録

梅毒性大動脈炎(SA)に伴う左冠動脈入口部狭窄および大動脈弁閉鎖不全症(AR)に対し,新鮮自己心膜を用いた入口部形成術および大動脈弁置換術を施行し良好な結果を得た.症例は50歳,男性.慢性心房細動,多発性脳梗塞の精査中,左冠動脈入口部90%狭窄,AR III度および左心耳血栓を認めた.活動性感染兆候は認めないが,血清学的にTPHA抗体価10,387倍,RPR定性陽性であった.CTでは上行大動脈は正常であったが,術中所見で大動脈周囲の炎症性変化を認めSAが示唆された.上方アプローチで左冠動脈主幹部を切開し新鮮自己心膜パッチを縫着,機械弁で大動脈弁置換を施行した.術後経過は良好であった.組織学的所見はSAに一致し,免疫組織学的に梅毒トレポネーマを認めた.臨床上希だが大動脈弁閉鎖不全と冠動脈入口部狭窄の合併は,SAの可能性を考慮すべきである.本術式をSAに対して用いた報告はなく慎重な経過観察が必要である.

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