抄録
先天性心疾患における術前形態診断は手術術式の決定にきわめて重要である.今回われわれは肺静脈還流異常(TAPVR)12例,arch anomaly 4例に対し,16列MDCTを用いた3次元立体再構築画像を評価し,外科的有用性を検討した.イオパミロン370(1.5ml/kg)により造影,心拍非同期で撮影し1mm幅で得られた画像を3次元立体再構築した.術前TAPVR症例では全例で病型診断,肺静脈閉鎖(PVO)合併の有無と部位診断が可能であった.また,aspleniaに合併したTAPVR Type IIIおよびType I aの2症例ではMDCTにより特異な共通肺静脈幹の形態と心房との位置関係が正確に診断可能で,心房内アプローチによる修復を選択し良好な結果を得た.また,術後のPVOの診断においては吻合部狭窄や末梢肺静脈(PV)狭窄の有無の診断が可能であり,2例でsutureless in situ pericardial repairを施行した.Arch anomaly症例では大動脈縮窄症(CoA)や大動脈離断症(IAA)診断はもとより,大動脈弓低形成の程度や比較的希な分枝異常(孤立性の鎖骨下動脈などの合併),気管,食道などの周囲との位置関係が容易に診断され,手術術式決定に不可欠であった.以上から肺静脈還流異常や大動脈弓部異常を伴う先天性心疾患の外科治療において,MDCTを用いた術前形態診断はきわめて有用であり,今後症例によっては心臓血管造影などの侵襲的検査法を回避しえる可能性が期待された.