日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
多発外傷を伴った外傷性胸部大動脈損傷の1例
尾崎 公彦北條 浩河内 和宏横手 祐二許 俊鋭
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 35 巻 5 号 p. 261-263

詳細
抄録
症例は59歳,女性.自宅2階のベランダより転落し,意識消失しているところを発見され救急車で搬送となった.体表面上は擦過傷程度であったが,画像診断により脳出血,第11胸椎椎体骨骨折および両側胸水貯留,右第4~6肋骨骨折,右肩甲骨骨折を認め緊急入院となった.入院翌日に,精査目的のため再びCT検査を施行したところ,脳出血の進行と,さらに遠位弓部大動脈より始まる急性の大動脈解離が認められた.外傷性の胸部大動脈損傷は,時間の経過とともに死亡率が増加するとの報告もあり,発見された時点で緊急手術を考慮するが,今回の症例では脳出血および胸椎骨折を伴っており全身ヘパリン化により脳出血が増悪すること,また体位変換により脊髄神経が障害されることを考慮し,十分な降圧管理のもと待期手術の方針とした.受傷後55日目に,大動脈損傷に対して24mmの直型人工血管(Hemashield Gold)を用いて下行大動脈人工血管置換術を施行した.術後経過は良好で,麻痺などの神経障害も認めず,術後27日目に独歩退院となった.
著者関連情報
© 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top