2007 年 36 巻 5 号 p. 298-300
感染性心内膜炎(IE)に起因した深大腿動脈の破裂性感染性動脈瘤という希な疾患を経験したので報告する.患者は59歳,女性.熱発,食思不振を主訴に近医を受診され,精査でIEと診断された.加療目的に当院へ紹介となり,病状から保存的に治療する方針となった.入院6日目に右大腿内側の疼痛を突然訴え,疣贅による塞栓症と診断した.塞栓症の発症に加え,心エコーで疣贅の増大もみられたため,準緊急で大動脈弁置換術,僧帽弁置換術を施行した.術後経過は良好であり術後2週間で炎症反応も陰性化した.ところが術後3週間して再び右大腿内側の疼痛,腫脹を訴えた.CTを施行し,深大腿動脈末梢部の血腫を認め,感染性右深大腿動脈瘤破裂と診断した.感染がコントロールされていたため,同日,瘤の流入血管である中枢側深大腿動脈を局所麻酔下に結紮して止血し,保存的にみる予定としたが,軽度の感染兆候の再燃を認めたため,人工弁置換後であることを考慮し,後日,感染性動脈瘤の完全切除を行った.患者は現在外来通院中であるが,術後1年を経過し,感染の再燃や瘤の再発,下肢の虚血症状などは認めていない.