日本栄養士会雑誌
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地域独居高齢者における全身運動を組み合わせた咬合力アップ運動の効果と有用性について
中村 早緒里高橋 志乃前田 予子
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2012 年 55 巻 8 号 p. 646-655

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抄録

咬合力や咀嚼力と運動の関連性に着目し、咬合力アップ運動を導入して、その効果とQOL の維持および向上をめざすことを目的とした。 対象者は70 歳以上の独居高齢者で、運動に参加した者(介入群)12 名と運動に参加しなかった者の中から無作為に抽出された者(非介入群)31 名である。平成21 年9 月から23 年9 月までを介入期間とした。1 回あたり30~40 分間の運動を毎月2 回行った。運動の内容は準備運動、口腔機能向上トレーニング、運動器機能向上トレーニングおよび整理体操であった。客観的データとして、身体測定と口腔機能判定を両群共に毎年行った。また、質問紙を用いた面接聞き取り法にて介入群にはMNA®、食生活調査、ADL、食物摂取頻度調査を、非介入群にはMNA®、食生活調査を毎年行った。 介入群では、握力、咬合力、咀嚼力は現状維持が見られた。 介入群と非介入群の比較において、咬合力では開始時から開始1 年後の変化率が非介入群は減少したのに対し、介入群は増加しており、有意な差が見られた(p=0 . 020)。MNA® では、開始1 年後のポイントが非介入群は減少したのに対し、介入群は増加しており、有意な差が見られた(p=0 . 013)。 全身運動を組み合わせた咬合力アップ運動により握力、咬合力、咀嚼力の現状維持が見られたことから、介護予防をめざした高齢者の健康づくりに咀嚼力と咬合力の維持・向上を組み込んだ総合的な支援は、QOL の維持および向上に有用であることが示唆された。

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© 2012 公益社団法人 日本栄養士会
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