日本災害医学会雑誌
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Print ISSN : 2189-4035
原著論文
点滴架台の確保困難時における体重加圧による急速輸液と維持輸液方法の検討
城川 雅光 井上 孝隆中島 幹男後藤 英昭
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2021 年 26 巻 1 号 p. 11-18

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抄録

【目的】災害時、点滴架台が確保困難時の輸液方法として加圧輸液がある。加圧輸液で急速輸液と維持輸液を行った検証報告は少ない。急速輸液では臀部加圧での最大滴下速度と平均滴下速度、維持輸液では頭部加圧が利用できるかを検証した。【方法・結果】(実験1 臀部加圧の滴下速度変化)成人用および小児用輸液ルートに20 Gカテーテルを装着し、体重65 kgの協力者の臀部加圧で滴下した。輸液全量は滴下できず、滴下停止までの平均滴下速度は、滴下開始5分の最大滴下速度の75%(成人用)、55%(小児用)であった。(実験2 急速滴下速度)成人用輸液ルートを使用し、加圧方法を自由滴下、40 kPa加圧バッグ、体重55 kgの協力者の臀部加圧、体重65 kgの協力者の臀部加圧に分けた。成人用輸液セットと、18、20、22 Gカテーテルを用い、滴下開始1分の最大滴下速度を計測した。滴下速度は最低でも12.8 ml/分であった。1時間の滴下量に換算すると768 ml/時間であった。(実験3 維持滴下速度)小児用輸液ルートを使用し、加圧方法を体重55 kgの協力者の頭部加圧と体重65 kgの協力者の頭部加圧に分け、20、22、24 Gカテーテルを用いた。滴下開始1分の最大滴下速度を計測した。滴下速度は、55 kg頭部加圧で2.2–3.4 ml/分、65 kg頭部加圧で1.0–1.2 ml/分と、体重やカテーテル径と関連性は乏しかった。【考察】今回の実験結果は、使用する資機材や体重などにより変動はあるものの、急速滴下実験で行った臀部加圧の滴下速度は、768 ml/時間以上を得た。また維持滴下実験で行った頭部加圧は、厳密な滴下速度管理は困難であった。しかし、輸液総量の監視と併用すれば、維持輸液に応用できる可能性があると考えられた。

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