歯科材料・器械
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原著
人歯・牛歯の放射線劣化に関する研究
木村 博寺岡 文雄斉藤 隆裕
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1982 年 1 巻 2 号 p. 124-130

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抄録
 口腔内の悪性腫瘍等に放射線照射を行い, 治療の効果が得られているが, 放射線照射による歯周疾患等を併発することがある.著者らは放射線治療のための放射線照射と, 歯質の崩壊との関係を明らかにするための基礎的研究を行っている.すなわち人歯と牛歯の象牙質に60Coγ線と中性子線を照射し, 放射線による象牙質の劣化について検討している.人歯と牛歯の前歯を用い歯軸方向が長軸となる様に切削し, 約0.8×4.5×6.5 mmの試料を得た.湿潤状態で試料に60Coγ線は1×105から1×107rまで, JRR-4による中性子線は8×1013n/cm2・secの熱中性子束を1から40分間照射した.放射線による影響を引張試験, X線回析法, X線マイクロアナリシス, TG-DSC, IR, とSEMで観察し検討した.放射線照射の歯牙に与える影響は, 初期では架橋効果を期待できるが, 60Coγ線の1×106rでは劣化し, 1×107r照射および中性子線の8×1013n/cm2・sec×10 minで象牙質は崩壊した.象牙質の強度はコラーゲンがかなり寄与していると考えられる.
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© 1982 一般社団法人 日本歯科理工学会
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