抄録
アマルガムの主たる構成金属である銀の鋳造体 (φ4 mm, L8 mm円柱)を各種溶液中に浸漬し, 経時的および熱的変化を与えて腐食溶出量を原子吸光法で測定した.実験計画法に基づき3因子3水準を設定し, L27(313) 直交表によってわりつけし, 結果を分散分析した. その結果, すべての因子に有意性が認められたが, 溶液の種類が最も決定的な因子と考えられた. 溶液の有意差は3ヵ月後に明確に現われ, 生食液中で最大, 人工唾液中で最小の溶出を示した. 経時的および熱的因子の影響は溶液によって異なり, 人工唾液中ではいずれの因子にも影響されず, 1%乳酸溶液中では60℃で最大溶出量を示し, 生食液中では経時的影響が顕著で3ヵ月後に最大溶出量(約 0.03 mg/cm2)となった.アマルガムの腐食試験の条件設定には, 銀の溶出が微量のため大きな決定要因とはならず, 他の金属の結果を優先すべきと考える.