歯科材料・器械
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1 巻, 3 号
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原著
  • 若狹 邦男, 山木 昌雄
    1982 年1 巻3 号 p. 187-192
    発行日: 1982/09/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    第2報では, 歯科鋳造用低溶融 32 Ni-23 Cu-25 Mn合金鋳造体組織に対する air-vent の影響について調べ, どのような air-vent system が組織の homogeneity に対して最適であるかを検討した.その結果, ADA規格フルクラウンタイプ咬合面中央垂直位にスプルー線を植立した場合 (0度) とフルクラウン咬合面縁端部偶角位に 45度の傾斜角をもって植立した方法 (45度)を選び, それらに blind-type と closed-type の air-vent を併用したとき, いずれの方法でも, デンドライティックな A 粒, 塊状な B 粒と粗大な C 粒がみとめられた. 特に, vent 効果は B 粒の腐食性に対して影響することがわかった. また, 鋳造体表層部の組織の種類とその分布をみると, 45度植立で blind-type の air-vent system 併用時に均一な粗大粒 C 粒の形成がみられ, その C 粒の分布は鋳造体全体にわたって均一であった. 以上の点から, 低溶融合金における air-vent system として45度植立, blind-type のものが最適であることが判明した.
  • 若狹 邦男, 山木 昌雄
    1982 年1 巻3 号 p. 193-197
    発行日: 1982/09/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    歯科鋳造用 84Ni-9Cr 合金鋳造体の組織変化を第2報と同様な各種 air-vent system を用いて検討した. その結果, スプルー線 0 度植立で blind-type および closed-type の air-vent system を併用したものでは, フルクラウン型鋳造体内部およびその表層部において等軸型と細長いセル型から成るセル組織の形成することがわかった. 他方, 45度植立で air-vent(blind-type) の併用した時には, 鋳造体内部と表層部では, それぞれ, セルラー・デンドライト組織とセル型のセル組織が形成しているので, この場合の組織形態の分布は均一でないことが明らかになった. 次に, 組織形態の大きさおよびその分布をみると, スプルー線 0 度植立のものでは一般に air-vent の種類に関係なく, 等軸型セル組織が鋳造体表層部全面に約 20 μmの均一な分布がみとめられた. しかしながら, closed-type の air-vent の場合には, セル型組織の不均一な分布がみとめられた. 他方, スプルー線 45度植立で blind-type の air-vent では, セルラー・デンドライト組織のアーム長さもスプルー部近傍で 100〜500 μmのように幅広く分布しており, スプルー部から遠い場所ではこれらの値よりも更に小さいことが判明した.セルラー・デンドライト組織を腐食性から見ると, それら組織間の界面ではなく, Ni偏析を生じる組織のみが強く腐食されているのがみとめられ, この腐食領域がセル界面のみを腐食するセル組織のものよりも極めて大きいことが明らかになった. 以上の点から, 高融点 84Ni-9Cr 合金の場合, 低溶融 Ni 基合金のものと異なってスプルー線の 0 度植立で blind-type の air-vent のものが最適であることが判明した.
  • 小田 邦雄
    1982 年1 巻3 号 p. 198-212
    発行日: 1982/09/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    充填時におけるアマルガム練和物の填塞度を解明するため, 填塞度測定用充填装置を考案し, これを応用し, 基礎的研究として削片状および球状合金各 1 種を用い, 各種操作条件がアマルガム練和物の填塞度に及ぼす影響について調べた.
    その結果, 次のような結論を得た.
    1)充填時の圧縮回数が増加すると填塞度の変化は安定し, 一般に第75回あるいは第100回圧縮時以後でほぼ一定となった.
    2)練和時間および練和物の大きさは填塞度にほとんど影響を与えなかった.
    3)水銀-合金比, 充填開始時期, 充填圧, 充填器の大きさおよび窩洞-充填器の面積比は填塞度に影響を与えた.ことに球状合金はこの影響が顕著であった.
    4)同一充填圧の場合, 球状合金アマルガムは削片状合金アマルガムより小さな填塞度を示した.
  • 東 福松
    1982 年1 巻3 号 p. 213-225
    発行日: 1982/09/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    本研究は, 歯科用セメントを水中に浸漬した場合の元素の溶出量, 硬化物表面の性状およびその元素分析に関するものである.
    リン酸亜鉛セメントを蒸留水中に1日間浸漬した場合, 溶解量は Zn は 4.2μg/cm2を示し, Mg および Ca は, それぞれ 2.9 および 0.4μg/cm2を示した。7日間浸漬した場合は, 表面に約10μmのリン酸亜鉛の結晶が析出したことを EPMA の測定によって明らかにしている.
    カルボキシレートセメントの Zn の溶解量は, 1および7日間ではいずれも比較的小さいが, Mg は1および7日間でそれぞれ 2.9 および 26.2μg/cm2の非常に大きい値を示した.
    ケイ酸セメントの溶解量は, 1日で Na は 247.1μg/cm2の大きな値を示し, 7日間では 340.2μg/cm2に達した. また, Si および Al は1日間でそれぞれ 33.0 および 36.1μg/cm2を示し, 7日間では, いずれも増加した.
  • 中井 宏之, 入江 正郎, 橋本 弘一, 長山 克也
    1982 年1 巻3 号 p. 226-233
    発行日: 1982/09/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    7種の市販アマルガム (従来型2種, 高銅型4種, フッ化物含有型1種) の12ヵ月におよぶ水中浸漬に伴う機械的性質と微細構造の変化を調べた.
    フッ化物含有アマルガムを除くすべてのケースにおいて, 圧縮強さのわずかな増加と, 引張り強さのわずかな減少をみとめた.
    フッ化物含有アマルガムにおいては, 圧縮強さと引張り強さの著明な低下をみとめた.
    従来型削片状アマルガムとフッ化物含有アマルガムを除くすべてのアマルガムにおいてはクリープには変化がみられなかった. これらの2種のアマルガムについては微細構造の明らかな変化がみられ, 物理的性質の変化との関連性がみられた.
  • 中井 宏之, 入江 正郎, 橋本 弘一, 長山 克也
    1982 年1 巻3 号 p. 234-243
    発行日: 1982/09/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    タンニン・フッ化物を配合した高銅型アマルガムの物理的性質と12ヵ月に及ぶ浸水の及ぼす影響を微細構造との関連性から検討した. タンニンフッ化物の配合比率が0.5%までの場合には物理的性質には著明な影響は何等あらわれなかった. しかしながら1.0%では明らかに影響がみられた.
    水中浸漬による影響はタンニン・フッ化物合剤を1.0%含むアマルガムの経方向引張強さの減少という点で明らかであった. 圧縮強さや静的クリープには著明な変化はみとめられなかった. 微細構造の変化はタンニン・フッ化物含有アマルガムについて, 配合比に関係なくみられた.
  • 土生 博義, 太田 喜一郎, 平口 久子, 小林 孝誌, 田辺 直紀
    1982 年1 巻3 号 p. 244-249
    発行日: 1982/09/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    アマルガムの主たる構成金属である銀の鋳造体 (φ4 mm, L8 mm円柱)を各種溶液中に浸漬し, 経時的および熱的変化を与えて腐食溶出量を原子吸光法で測定した.実験計画法に基づき3因子3水準を設定し, L27(313) 直交表によってわりつけし, 結果を分散分析した. その結果, すべての因子に有意性が認められたが, 溶液の種類が最も決定的な因子と考えられた. 溶液の有意差は3ヵ月後に明確に現われ, 生食液中で最大, 人工唾液中で最小の溶出を示した. 経時的および熱的因子の影響は溶液によって異なり, 人工唾液中ではいずれの因子にも影響されず, 1%乳酸溶液中では60℃で最大溶出量を示し, 生食液中では経時的影響が顕著で3ヵ月後に最大溶出量(約 0.03 mg/cm2)となった.アマルガムの腐食試験の条件設定には, 銀の溶出が微量のため大きな決定要因とはならず, 他の金属の結果を優先すべきと考える.
  • 高橋 純造, 岡崎 正之, 寺岡 文雄, 木村 博, 古田 安宏, 山田 勝康, 渡瀬 透
    1982 年1 巻3 号 p. 250-257
    発行日: 1982/09/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    Ni-45wt%Ti(Ni-50at%Ti) 合金を, アルゴン・アーク溶解加圧吸引鋳造機と銅ルツボを用いて, マグネシアセメント鋳型とリン酸塩系埋没材鋳型に鋳造した.マグネシアセメント鋳型による鋳造体の方が, リン酸塩系埋没材鋳型による鋳造体より, 伸びは大きかったが, 鋳肌は粗であった.
    0℃で曲げ変形した鋳造体は, すべて形状記憶効果を示した. しかし一部の鋳造体は, 0℃での曲げ変形時に破断した.
  • 高橋 純造, 岡崎 正之, 寺岡 文雄, 木村 博, 清水 信宏, 伊藤 享, 宮沢 信夫
    1982 年1 巻3 号 p. 258-264
    発行日: 1982/09/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    鋳造冠内面隅角部に生ずるくぼみ状鋳造欠陥について, 種々な鋳造条件でKメタルを用いて検討した.
    1)鋳込み不足およびくぼみ状鋳造欠陥は, 石こう系埋没材を用い遠心鋳造した場合は, 太いスプルー, 高い鋳型温度, 多いバネ巻き数により, なくなった.
    2)リン酸塩系埋没材を用い遠心鋳造した場合は, 上記の場合より高い鋳型温度で, くぼみ状鋳造欠陥はなくなった.
    3)加圧鋳造(空気圧4kg/cm2, 加圧時間 30 sec.)した場合は, リン酸塩系埋没材でも, また低い鋳型温度でもくぼみ状鋳造欠陥は発生しなかった.
    4)加圧鋳造で加圧時間が短い場合, 鋳込み不足およびくぼみ状鋳造欠陥が発生した.
  • 高橋 純造, 寺岡 文雄, 岡崎 正之, 木村 博
    1982 年1 巻3 号 p. 265-271
    発行日: 1982/09/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    Ni-Cr合金鋳造冠の外部鋳造欠陥について, 種々の鋳造機を用いて検討した.その結果, 次のような結論を得た.
    1)石こう系埋没材を用いると, 鋳肌あれを生じた.
    2)遠心鋳造機, リン酸塩系埋没材を用いると, 鋳型温度が低い場合あるいは係留時間が短い場合に, 鋳造冠内面にくぼみ状鋳造欠陥が生じた.
    3)加圧鋳造機, リン酸塩系埋没材を用いると, 低い鋳型温度あるいは短い係留時間にもかかわらず, 鋳造冠内面にくぼみ状鋳造欠陥は生じなかった.
    4)別の加圧鋳造機の場合, 鋳型内空気が排除された後, 鋳造リング全体にアルゴン加圧されるこの鋳造機, リン酸塩系埋没材を用いると, 内面にはくぼみ状鋳造欠陥は生じなかったが, 外表面には大きなへこみを生じた.
  • 清水 友, 鈴木 暎, 久賀 嘉代子, 守屋 圭子, 宮治 俊幸
    1982 年1 巻3 号 p. 272-280
    発行日: 1982/09/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    歯科用アマルガムの熱的挙動を検討するため高温X線回折装置を用いて, γ1, γ2, β1相など回折線図の温度による影響を調べた結果, 以下の結論がえられた.
    1)低銅型におけるγ2相の回折線は73℃付近でバックグラウンドに消失する.
    2)γ1→β1の変化は練和後の経過時間よりも温度による影響が大きい.
    3)温度を上げていった場合, β1回折線の出現は, 高銅型低銅型を問わず73℃付近であるが, γ1回折線の消失温度は, 低銅型より高銅型の方が高くなっている.
    4)温度を下げていった場合, 低銅型では40℃付近でγ1回折線が再び出現するが, 高銅型では60〜70℃で同様の現象が起こる.
    5)一度加熱により出現したβ1は, 冷却して室温に戻しても僅かに残る.温度変化に基づいたβ1回折線の変化は, 削片型合金の場合, 高銅型, 低銅型を問わず1カ月後にβ1の回折線がバックグラウンドに消失する.
  • 木村 博, 寺岡 文雄, 斉藤 隆裕
    1982 年1 巻3 号 p. 281-285
    発行日: 1982/09/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    前報では, 最近 Reigning 法で注目されているポリサルホン (P.S.F.と略称) の溶接の可能性を明らかにし, 修復, 調整法としての歯科用P.S.F.の溶接を発表した.すなわち, P.S.F.の溶接強度は, 即重レジンによる接着強度の2倍を期待することが出来ることや, P.S.F.の溶接部には相当気泡が介在しており, 発泡を抑えた溶接の開発が必要であることを明らかにしている.本報では, 発泡を伴わない溶接を行い得る為の研究を行い, 成功したので報告する.発泡を抑える溶接法として, 予備を乾燥採用した.試料は日産化学のP・1700 NTを用い, 10×10×2 mm板を作り用いた.状態調整は20℃で48時間, デシケーター中と生理食塩液中で行い, その後, 予備乾燥を送風定温乾燥器で100〜160℃, 0.5〜24時間行っている.本研究の結果, P.S.F.の溶接部に生じる気泡は, 予備乾燥を160℃で3〜3.5時間行うことによって予防出来ることが明らかになった.
  • 河合 達志
    1982 年1 巻3 号 p. 286-298
    発行日: 1982/09/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    歯科鋳造における収縮を考察する基礎データを蓄積するために, 純金, 純銀, 純銅の密度を, 静滴法を基礎とした装置を使用して, 室温から約 1400℃までの範囲で測定した. 液体, 凝固時, 固体における熱収縮を各々, できる限り他の物質の影響の無い状態で, 密度の温度依存性から決定した.
    凝固時における体積の減少は金において 5.2%, 銀において 5.0%, 銅においては4.9%であった.
    この結果から歯科鋳造における収縮について厳密な考察を行なった.
  • 郭 永昌
    1982 年1 巻3 号 p. 299-311
    発行日: 1982/09/25
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    28種類の市販充てん用レジンの吸水量および溶出量をISO(TC 106, WG 1/TG 9)の規格案に従って測定した. また 85℃, 48時間, 600 ml蒸留水を用いたソックスレー抽出と, 37℃, 1週間, 5 mlエタノール・水あるいはテトラヒドロフラン・水混合溶液を用いた抽出を行なった. その結果, 次のことが明らかになった.
    1)無機質フィラーコンポジットレジンと有機質複合フィラーコンポジットレジンの吸水量と溶出量を比較した結果, 吸水量と溶出量ともに前者は後者より小さかった.
    2)光重合型コンポジットレジンはレジン重合体表面を研磨するかしないか (非研磨) によって, 吸水量と溶出量に大きな相異がみられた. 非研磨の場合, 溶出量は大きかったが, 吸水量は小さくなった. これは表面の未反応モノマーおよび低分子化合物などが除去されなかったためと考えられる.
    3)600 ml蒸留水を用いて, 85℃, 48時間, ソックスレー抽出を行った結果, 溶出量は ISO 規格案の測定値より大きな値を示した.
    4)一般に, テトラヒドロフランのような極性の小さな溶剤による溶出量は, より極性の大きなエタノールの場合より大きかった. しかし, 有機質複合フィラーコンポジットレジンの中には有機溶剤抽出の結果, 膨潤したり, 一部崩壊するものもあった.
    5)水, エタノール・水混合溶液による抽出後の充てん用レジン表面はフィラーが顕在化した.
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