歯科材料・器械
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原著
種々の分子量をもつポリアクリル酸のCaイオン存在下における電位差滴定とそれらポリマーを用いたセメントの金属に対する接着性
倉田 茂昭楳本 貢三
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1992 年 11 巻 2 号 p. 256-261

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抄録
高分子電解質系セメントのポリマーとカルシウムイオンの凝集状態を検討するために, 分子量の異なるポリアクリル酸水溶液を用い, カルシウムイオン存在下での電位差滴定ならびに滴定溶液中の遊離のカルシウムイオン量の測定を行い, あわせてポリアクリル酸の分子量の違いによる金属に対する接着強さを検討した.その結果, ポリアクリル酸約4×10-3Nの希薄溶液でカルシウム濃度8mMのとき, ポリアクリル酸とカルシウムイオンとの反応性は, ポリアクリル酸の分子量に影響され, 分子量が約40万以下の場合, カルボキシ基とカルシウムイオンは2対1の比で結合する.しかし, 分子量約100万では, 溶液中のカルシウムイオンの数がカルボキシ基の数より多くなると, 凝集しやすくなり, 凝集した沈殿物中にカルシウムイオンと結合しないカルボキシ基が存在する.一方, 種々の分子量をもつポリアクリル酸と市販ポリカルボキシレートセメント粉末とから調製したセメントの金属に対する接着強さでは, 分子量約15万に極大が見られ, 必ずしも高分子量のポリマーで高い強度を示さなかった.この理由として, 高分子量のポリアクリル酸は金属イオンと凝集反応しやすく, セメント硬化体中に未反応のカルボキシ基を多数残存させるため, セメント硬化体の機械的性質や接着強さが低下すると推定された.
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© 1992 一般社団法人 日本歯科理工学会
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