歯科材料・器械
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11 巻, 2 号
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原著
  • 新田 英行
    1992 年11 巻2 号 p. 185-195
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    模型の再現性を向上させるための適切なアルジネート印象材の弾性ひずみ量について検討を行った.材料は, 印象材として主に組成比率の調製によって弾性ひずみ量を10〜21%の範囲で5段階に変化させたアルジネート印象材を試作し, 使用した.模型材として硬質石こうを使用した.ストレート, テーパーおよびアンダーカットタイプの3型の原型を使用して模型を作成し, 模型の寸法精度および変形について三次元座標測定システムにより測定を行った.その結果, ストレートおよびテーパータイプの模型では, 弾性ひずみ量の影響は認められなかった.アンダーカットタイプの模型では, アンダーカット下部が広がる変形が認められたが, アルジネート印象材の弾性ひずみ量の減少に伴って変形が減少した.模型の再現性を向上させるための適切な弾性ひずみ量は, 15〜17%であることが示唆された.
  • 坂井 論
    1992 年11 巻2 号 p. 196-206
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    歯科領域において様々な新しい医用高分子材料が取り入れられてきており, さらに高機能性を有した高分子材料が求められてきている.近年, いくつかの高分子材料に形状記憶機能のあることが報告された.しかしながら, これらの高分子材料は形状記憶合金に比べ成形の容易さ, 着色が自由, 錆びない, 安価であるなどの利点を有するにもかかわらず歯科領域ではほとんど応用されていないのが現状である.そこで, 形状記憶効果を有する樹脂を歯科領域に応用するにあたり, まず種々の物性を知る必要がある.樹脂には, 数種のポリマーがあるが, その中の一つであるスチレン・ブタジエン共重合体SB系ハイブリッドポリマーを選択し, その機械的性質および熱的性質ならびに形状記憶効果について検討を行い以下の結論を得た.1.本樹脂は, 吸水はほとんど認められない疎水性の耐久性に優れる材料であると考えられる.2.本樹脂は, 粘りがあり, 柔らかい, すなわち剛性の小さい軟性レジンに属する材料であることがいえる.3.形状回復率は, 70℃以下では回復は鈍く, 温度が高くなる程, 速やかに回復が始まり, 80℃以上において, ほぼ元の寸法に回復する.牽引する力は, 延伸量に比例して大きくなる.4.熱を負荷することにより, 射出成型時の残留応力が解放され, 各温度とも負荷回数が増えるごとに変形量も多くなる.5.低温から熱膨張量は大きく, 68℃付近において最大膨張量を示し, 最大熱膨張率は0.42%であった.95℃を越すと軟化溶融状態になった.6.示差熱分析(DTA)の結果, 44℃付近に融解転移にもとずく吸熱ピークが認められ, 示差走査熱量(DSC)における顕著な相転移点と一致することから, 44℃付近に本樹脂の相転移点が存在する.7.フーリエ変換赤外分光分析(FT-IR)より, 本樹脂はポリスチレンが骨格分子をとり, 熱的性質はポリブタジエンが支配していることが推測された.
  • 若松 宣一, 後藤 隆泰, 足立 正徳, 亀水 秀男, 飯島 まゆみ, 渡辺 孝, 金 昇考, 土井 豊, 森脇 豊, 堤 定美
    1992 年11 巻2 号 p. 207-215
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    Li3PO4を含むハイドロキシアパタイト(HAP)の初期段階の焼結機構を等速昇温法を用いて調べた.無添加HAPの場合, 800℃以下では見かけの活性化エネルギーが104kcal/molで与えられる粒界拡散が緻密化速度を支配する機構である.Li3PO4を添加したHAPの場合, 750℃以下では粒界拡散が緻密化速度を支配していた.しかし, 750℃を越えると焼結パラメータNは1.9から0.6へ減少した.このことは750℃以上での緻密化が液相を伴う再配列プロセスによることを示している.この液相焼結の活性化エネルギーは252kcal/molであった.
  • 伊藤 充雄, 原 基, 塩谷 晴重, 輿 秀利, 山岸 利夫
    1992 年11 巻2 号 p. 216-224
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    バイオガラスの脆さを補うために, チタンと複合させることが考えられる.チタン表面にバイオガラスを焼付けるとき酸素が拡散して脆くなる.この現象を回避させるために, プラズマ溶射によって, チタン表面にMo, Alをそれぞれ単独あるいは混合してコーティングし, 皮膜を形成した.この皮膜によって, 酸素の拡散を減少させることを試みた.コーティングした金属の拡散と酸素の拡散による材質の変化を, かたさ, 曲げ強さ, 耐力について種々検討した.その結果, 以下の結論を得た.チタンは加熱することによって, 脆くなった.特に1000℃加熱では顕著であった.チタンにAlをコーティングし, 900℃に加熱した場合, 酸素のチタンへの拡散が防止できた.Alをコーティングした皮膜は加熱すると皮膜中に空隙が多く生じた.MoとAlの粉末を混合してコーティングしたチタンを熱処理した場合, Alが多くなると脆くなる傾向であった.Moのコーティングは加熱によってチタンの靱性を損なうことなく, 材質の向上が得られた.
  • 友清 直
    1992 年11 巻2 号 p. 225-232
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究は, 可視光線重合型レジンの重合率を改善することを目的とし, 複合増感剤の組成と重合率との関係を検討したものである.可視光線重合型アンフィルドレジンは, モノマーとしてトリエチレングリコールジメタクリレートを用い, これに種々組成を変化させた複合増感剤を配合して調製した.光増感剤としてはカンファーキノン(CQ), ベンズアンスロン(BA), ジベンゾイル(DB), チオキサンテン-9-オン(T9), 8-キノリンスルホニルクロライド(QC)および3-フェニル-5-イソオキサゾロン(PIO)を用いた.還元剤としては, メタクリロキシエチル-p-ジメチルアミノベンゾエート(DMAB-EMA)を用いた.重合禁止剤は, 2, 6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(BHT)を用いた, 複合増感剤の基本組成(NON)は, CQ0.30wt%, DMAB-EMA1.40wt%およびBHT0.01wt%とし, これに他の光増感剤を1〜3種配合して用いた.試作したレジンについて, FT-IRを用い, KBr液膜法に準じて吸光度スペクトルを測定した.測定は, 光照射前および90秒間光照射後の所定時間に経時的に行った.硬化させたレジン中の残存二重結合量(RDB)は, BA-PIO系のレジンの場合を除いて, いずれの場合も, 光照射開始5分以降経過時間(対数表示)と直線関係で減少した.BA-PIO系のレジンは, 重合反応の誘導期を示した.NONに光増感剤1種を配合した複合増感剤を用いた場合の重合率は, 光照射開始5分後でQC>DB>T9>NON>BAの順であった.複合増感剤に用いる補助光増感剤としては, QCが最適で, その配合量は0.30wt%であった.
  • 細田 裕康, 山田 敏元, 尾上 成樹
    1992 年11 巻2 号 p. 233-243
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    グラスポリアルケノエートセメント修復物の適切な研磨法を確立するため, 3種の市販品について種々のシリコンポイントを用いて研磨時期を変化させて研磨実験を行い, それら研磨面の表面粗さが測定された.また, 硬化したセメント表面のヌープ硬さも研磨時期に一致した時期に経時的に測定された.これら仕上げ研磨面の二次レプリカがSEMにより観察された.1.グラスポリアルケノエートセメント修復物の研磨方法は練和開始後一週間以降に行われるべきである.2.シリコンポイントハードレッドとシリコンポイントブルーの併用による注水下の研磨が, 最も滑らかなセメント研磨面を作り得た.3.セメント研磨面の表面粗さと, 硬化した表面のヌープ硬さの間には高い負の相関が認められた.
  • 山田 敏元, 平野 俊明, 細田 裕康
    1992 年11 巻2 号 p. 244-249
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    3種のグラスポリアルケノエートセメント硬化物の研磨面が, -150℃に冷却した状態で試料にダメージを与えないようにクライオSEMにより観察された.次いで, セメント試料の元素分析がEDXにより行われた.得られた研磨面の反射電子組成像が画像処理装置に移され, コアとマトリックスの面積比が算出された.1.セメント研磨面はクライオSEMを用いることにより, 試料にダメージを与えることなく明瞭に観察された.2.画像処理により得られたcore対matrix比は, Fuji Ionomer Type II-Fが3:7, HY Bond Glas Ionomer-Fが3.6:6.4, Ketac-Filが4.3:5.7であった.3.EDXにより検出された元素は, Fuji Ionomer Type II-FとKetac-FilがAl, Si, Caであり, HY Bond Glas Ionomer-FがAl, Si, Sr, Caであった.
  • 浅岡 憲三, Ali S.M.A., 桑山 則彦
    1992 年11 巻2 号 p. 250-255
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    市販焼付用陶材(歯冠色陶材とオペーク陶材)6種について熱膨張係数の温度依存性を調べた.昇温過程で測定された陶材の熱膨張係数はガラス転移温度域になると, それより低温に較べて10倍以上高い温度依存性を示すことが明らかにされた.熱膨張の測定からガラス転移温度域になる温度および最大の見かけの熱膨張係数を示す温度が粘度から計算されるひずみ点, 徐冷点とほぼ一致した.板厚2mmの各種平板陶材を焼成温度から放冷, 圧縮空気を吹き付けながら強制冷却したときに陶材表面に生じる圧縮の残留応力は16〜25, 63〜92MPaになることがシミュレーションにより推定された.また, 焼付用合金との接合において不適合応力が生じ始める温度域では, 陶材と合金の熱膨張係数の違いが10×10-6/℃よりはるかに大きくなっており, 陶材のガラス転移温度域での熱膨張係数と粘弾性挙動が残留応力を決める重要な因子になっていることが明らかにされた.
  • 倉田 茂昭, 楳本 貢三
    1992 年11 巻2 号 p. 256-261
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    高分子電解質系セメントのポリマーとカルシウムイオンの凝集状態を検討するために, 分子量の異なるポリアクリル酸水溶液を用い, カルシウムイオン存在下での電位差滴定ならびに滴定溶液中の遊離のカルシウムイオン量の測定を行い, あわせてポリアクリル酸の分子量の違いによる金属に対する接着強さを検討した.その結果, ポリアクリル酸約4×10-3Nの希薄溶液でカルシウム濃度8mMのとき, ポリアクリル酸とカルシウムイオンとの反応性は, ポリアクリル酸の分子量に影響され, 分子量が約40万以下の場合, カルボキシ基とカルシウムイオンは2対1の比で結合する.しかし, 分子量約100万では, 溶液中のカルシウムイオンの数がカルボキシ基の数より多くなると, 凝集しやすくなり, 凝集した沈殿物中にカルシウムイオンと結合しないカルボキシ基が存在する.一方, 種々の分子量をもつポリアクリル酸と市販ポリカルボキシレートセメント粉末とから調製したセメントの金属に対する接着強さでは, 分子量約15万に極大が見られ, 必ずしも高分子量のポリマーで高い強度を示さなかった.この理由として, 高分子量のポリアクリル酸は金属イオンと凝集反応しやすく, セメント硬化体中に未反応のカルボキシ基を多数残存させるため, セメント硬化体の機械的性質や接着強さが低下すると推定された.
  • 黒岩 昭弘
    1992 年11 巻2 号 p. 262-277
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    スプルーの条件は, 鋳造性のみならず技工操作にも関与し, 鋳造を行う上で必要不可欠である.本実験はチタン鋳造の成功率を向上するために, スプルーに関しての基礎的検討を行った.スプルーの条件はスプルーの直径を5条件(0.88, 1.06, 1.26, 1.48および2.10mm), スプルーの長さを2条件(5および10mm)とし, それぞれの形態の異なる2つのパターンを用いて実験を行った.その結果, 次のことが明らかとなった.本実験に用いたメッシュパターンは2.1mm以上のスプルー径を用いれば良好な鋳造体が得られる.板状パターンによる鋳造は1.48mm以上のスプルー径において良好な鋳造体が得られた.メッシュパターン, 板状パターンにおいてスプルー径はチタン鋳造の鋳込率に大きな影響を及ぼし, スプルーの長さについては影響の大きく生ずるものと影響の小さいものがあることが認められた.2つの鋳造性評価方法を用いることにより, より確実で鋳込率の高い鋳造方法を検討する可能性が見出された.
  • 宮崎 光治, 秋山 陽子, 本川 渉, 堀部 隆, アントヌッチ ジョセフ.M., 高木 章三, チャウ ローレンス.C.
    1992 年11 巻2 号 p. 278-284
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    酒石酸およびフッ化第一錫を添加したPCA/CPCセメントの硬化反応を調べるため, 希薄溶液中でのpH変化, 各pHにおける反応生成物の赤外線吸収スペクトルを測定した.フッ化第一錫は, PCA/CPCセメントの硬化を阻害し, pHの上昇を著しく遅らせたが, 酒石酸を添加してもpH曲線への顕著な影響はなかった.しかし, 酒石酸を添加したPCA/CPCセメントは, フッ化第一錫のみを含むセメントに比べて, 硬化物中に残存する未反応のカルボキシ基の量が少なかった.そして, pH曲線における第一段階のpHの上昇は酒石酸とリン酸カルシウム中のカルシウムイオンとの反応に関係し, pH4以上においてポリアクリル酸とカルシウムイオンからなる塩の生成が確認された.カルボキシレートの吸光度変化とpHの関係においても同様の傾向が見られた.
  • 坂井田 康彦, 赫田 清, 宮川 行男
    1992 年11 巻2 号 p. 285-296
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, ラバーベース印象材の親水性とその印象材に接して硬化するせっこうの硬化膨張との基本的関係を明らかにすることであった.縮合型シリコーン, 疎水性付加側シリコーン, 親水性付加型シリコーン, ポリサルファイド, およびポリエーテルラバー印象材を含む22種の市販ラバーベース印象材とともに, 本研究では市販の硬質せっこう1種とさらに α 半水せっこうを使用した.それらの印象材試料に対する水の接触角, 水中浸漬後の印象材試料の重量変化, および水中における印象材試料の寸法変化を測定した.また, 印象材試料上で硬化するせっこうの硬化膨張を記録し, 以上の測定値と比較した.その結果, 接触角と硬化膨張との間には高度に有意の負の相関が観察された.一方, 重量変化と硬化膨張との間, および寸法変化と硬化膨張との間の相関はいずれも有意ではなかった.得られた重回帰式等に基づいて, ラバーベース印象材の親水性とせっこうの硬化膨張との関係について詳細な検討を行った.
  • 渡辺 孝一, 大川 成剛, 宮川 修, 中野 周二, 塩川 延洋, 小林 正義
    1992 年11 巻2 号 p. 297-307
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    鋳型空洞へ流入するときの流速と湯流れの挙動の関係を明らかにするため, 溶湯に作用する力を小さくして鋳造した.遠心鋳造の場合, メーカー指定条件はバネの巻数が38回であるが, 20回巻の場合は乱流として流れており, その流れ模様も殆ど標準の時と同じであった.しかしながらバネ10回巻の時は層流であった.差圧鋳造の場合, 0.6kg/cm2の溶解室圧力で使用すると(メーカー指定は1.1kg/cm2), 流れ模様がかなり変わり, また流速の内部欠陥に及ぼす影響が, スプルー取り付け位置によって変化していた.鋳造時の操作条件と鋳型空洞への流入速度の関係を検討するため, 溶湯に作用する力などの因子と, それによる速度の変化について理論的考察も併せて行った.
  • 杉井 勝彦
    1992 年11 巻2 号 p. 308-315
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    アルジネート印象材と硬質石こうとの組み合わせによる石こう模型の細線再現性についての検討に当たって, ISO1563の判定基準を補足した判定法を考察した.4種の市販アルジネート印象材と9種の市販歯科用硬質石こうとの組み合わせにより得られた石こう模型について, 細線再現性試験を行い, 新しい評価基準の有用性について, 石こう模型のSEM像とともに検討した.その結果, 次のことが判明した.アルジネート印象材と硬質石こうとの組み合わせの相違によって, 20μmの細線を再現する良好な模型と50μmの細線を部分的に再現する模型が得られた.考案した細線再現性試験の判定基準によって, これまでより詳細でかつ簡便な評価が可能となった.
  • 山賀 まり子, 小出 武, 親里 嘉之, 稗田 豊治
    原稿種別: 原著
    1992 年11 巻2 号 p. 316-323
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, タンニン・フッ化物合剤(HY剤)を配合したグラスアイオノマーセメント(GIセメント)硬化体の水中浸漬前後の硬化体表層部におけるHY剤成分の動向および表面の状態を明らかにすることである.セメント粉末中にHY剤を10重量%配合したGIセメント(試作品, HY10)を用いて, 90日間蒸留水中に浸漬後および未浸漬のセメント硬化体表層部におけるF, Zn, Srおよびタンニン酸の層別の含有量をabrasive法を用いて測定した.また, F, ZnおよびSrについてX線マイクロアナライザを用いて同部の面分析を行った.さらに, 同じ試料についてSEMによる表面の観察を行った.コントロールとして, HY材を配合しないGIセメント(HY0)を用いた.その結果, 1.水中浸漬後のセメント硬化体表層部における層別含有量の分析では, FはZn, Srおよびタンニン酸に比較して, 含有量の減少は大きく, 深部にても減少していた.2.X線マイクロアナライザによる面分析を行ったところFとSrの集積が一致して認められた.3.SEM像において, 水中浸漬後の試料では, 表面あれと析出物が観察された.一方, 未浸漬試料では表面が滑沢であった.また, 表面粗さの程度はHY0(コントロール)よりもHY10の方が顕著であった.したがって, 各成分の溶出の大部分は, セメント硬化体の極く表層部から起こることがわかった.また, Fは他の成分と比較して, GIセメント硬化体の内部からも放出されやすい元素であることが示唆された.
  • 宮崎 光治, 秋山 陽子, 本川 渉, 堀部 隆, アントヌッチ ジョセフ.M., 高木 章三, チャウ ローレンス.C.
    原稿種別: 原著
    1992 年11 巻2 号 p. 324-330
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    3種の溶液(人工唾液, リン酸緩衝溶液, 蒸留水)に浸漬した後の, PCA/CPCセメント硬化物のX線解析と浸漬液へのカルシウム, リン酸およびフッ素イオンの溶出量の測定を行った.その結果, 酒石酸およびフッ化第二錫を含むPCA/CPCセメントおよび含まないセメント共, 蒸留水中ではカルシウムとリン酸イオンの溶出が継続していたが, 人工唾液およびリン酸緩衝溶液中では, 約1カ月位から溶出が停止し, 逆に両イオンの取り込みが認められた.そしてX線解析の結果, それらの硬化物のうち, 酒石酸およびフッ化第二錫を添加したセメントは, 人工唾液および蒸留水に浸漬した場合, 硬化物内にフロロアパタイトまたはヒドロキシアパタイトの生成が認められ, さらに, 両添加物を含まないセメントの蒸留水中での長期浸漬のものにも, 僅かなアパタイトの生成が伺えた.また, フッ化第二錫を含むセメントからは, 6ヵ月の間に僅かつづフッ素イオンの溶出の持続が認められた.
  • 細田 裕康, 山田 敏元
    1992 年11 巻2 号 p. 331-343
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    直径約1.0μmおよび0.1μmの新型球状シリカフィラーが含有された2球状粒子高密度充填型の試作コンポジットレジンが開発された.このコンポジットレジンの諸性能として, 機械的性能, 線収縮率, アルカリ溶液中での化学的劣化, 可視光線照射による色調変化, フィラー粒子および硬化レジンのSEM観察, 表面滑沢性について検索を試みた.さらに, このコンポジットレジンを用いた臨床試験が行われた.その結果, 現在市販されているコンポジットレジンと比較して優れた性能と審美性を持った試作コンポジットレジンは, 研磨時の滑沢性も優れており, 臨床的に有用であった.
  • 福島 忠男, 宮崎 光治, 堀部 隆, 井上 廣
    1992 年11 巻2 号 p. 344-350
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    10-3処理象牙質への光重合型コンポジットレジンの接着力を改善するために, 塩化第二鉄のような無機塩の存在下で優れた光重合性を示し, 水溶性でもあるN-Methylolacrylamide(MEAA)およびN-Methylolmethacrylamide(MEMA)から成るデンチンプライマーを試作した.10wt%MEMA含有デンチンプライマー以外では, いずれのデンチンプライマーもコンポジットレジンの接着力を有意に増加させた.35%HEMA含有デンチンプライマー処理象牙質への接着力より50wt%MEAAおよび30wt%MEMA含有デンチンプライマー処理象牙質のものの方が有意に接着力は高かった.また, 50wt%MEAAおよび30wt%MEMA含有デンチンプライマーを使用すると, 10-3処理と10%クエン酸処理象牙質への接着力はいずれも近似していた.SEM観察結果, いずれの試料にも接着界面は厚さ約1μmの耐酸性象牙質層が観察でき, 接着破壊は耐酸性象牙質層, レジンあるいは象牙質の凝集破壊であった.
  • 仲居 明, 大谷 伸之, 湊 元也
    1992 年11 巻2 号 p. 351-356
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    埋没材泥の流動性や流体力学的特性を調べるために, 流動性試験装置を試作した.この装置は練和した埋没材を溜めておく容器と4本のノズル(直径0.60, 0.85, 1.05, 1.20cm, 長さ4.00cm), スラリーの体積流速を検出するための2本の電極を挿入した測定容器でできている.埋没材の各混水比(0.33, 0.31, 0.29)で4本のノズルを用い, 20ml間隔で100mlまでクリストバライト埋没材スラリーの体積流速を測定した.0-60ml間の平均体積流速から平均流速を算出した.測定の結果, 各混水比におけるスラリーの平均流速vとノズルの内径dの関係は, Poiseuilleの式で近似できることが分かった.このことは埋没材スラリーの流動がニュートン流体のように振る舞うことを意味している.32・lv/d2(l=ノズルの長さ)の値は埋没材の流動性を表わしていることが分かった.それ故, 測定した平均流速と, 使用したノズルの直径および長さから計算した32・lv/d2の値を比較することにより, 埋没材の流動性を評価することができる.
  • 加藤 元, 細美 靖和, 中林 宣男
    1992 年11 巻2 号 p. 357-362
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    TEGDMAを主成分とした光重合ボンディングライナーの長期接着耐久性欠如の原因を解明する目的で, 長期水中浸漬した光重合したTEGDMA硬化体の機械的性質の変化を検討した.還元剤をN-フェニルグリシン(NPG)または4-N, N-ジメチルアミノ安息香酸エチル(EDMABA)とし, 1日から1年にわたり所定期間水中浸漬した試料の圧縮強さ, ダイアメトラル引張強さおよび吸水率, 残存モノマー率, ペンダント二重結合率を調べた.二種の還元剤を用いて光重合したTEGDMA硬化体はいずれも吸水によりその機械的性質が低下し, 接着試料の水中における長期接着耐久性が劣る原因は吸水によることが明らかとなった.
  • 中村 健吾, 後藤 真一, 中村 哲也
    1992 年11 巻2 号 p. 363-373
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    パラジウムを25, 30, 35, 40wt%, 銅を15, 25, 30wt%含み, 残量35〜60wt%を銀とする12種のAg-Pd-Cu三元合金を溶製し, 歯科精密鋳造法に準じて鋳造した.800℃で溶体化処理したのち水中急冷処理(軟化熱処理)し, さらに450℃から250℃まで炉冷処理(硬化熱処理)して, それらの機械的性質と耐変色性を調べた.軟化熱処理したときの実験合金の引張強さは, 39〜57kgf/mm2, 伸びは14〜28%の範囲内にあったが, 硬化熱処理を加えると, 引張強さは66〜107kgf/mm2に増加し, 伸びは1〜7%に低下した.硬化熱処理時に引張強さが最大となった推定組成は, 34〜35Pd-20Cu-45〜46Agで, 推定引張強さは104±3kgf/mm2であった.ビッカース硬さは軟化熱処理時141〜200, 硬化熱処理時241〜431の範囲内にあり, パラジウム量, 銅量が増すにつれて増加した.37℃0.1%硫化ナトリウム溶液中に3日間全浸漬した試験片の明度L*は60〜67の範囲内にあり, パラジウム量が多く, 銅量の少ないほど良くなる傾向がみられた.
  • 菊地 聖史, 高久田 和夫, 宮入 裕夫
    1992 年11 巻2 号 p. 374-378
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    エアタービンハンドピースに代表される歯科用切削機械は, 患者の口腔内で使用され感染の媒体になり得ることから, その滅菌は臨床上の重要な問題である.しかしながらハンドピースは精密機械であって高温に対する耐久性は望めず, 滅菌操作の繰り返しによりハンドピースに不具合が発生することは免れ得ない.この問題に対する最終的な解決策は, ハンドピースのディスポーザブル化であるが, 回転機構をどう作るかが問題となる.そこで本研究では前報の軸受機構に引き続き, ロータの翼部分をプラスチックで製作し, 回転性能を調べてハンドピースへの応用の可能性について検討した.その結果, プラスチック軸受を使用した場合においてプラスチック翼ロータの回転速度はアルミ翼ロータに比べ若干低かったが, 停止トルクはアルミ翼ロータに比べ遜色なかった.また起動・停止に要する時間はプラスチック翼ロータの方がアルミ翼ロータより短く, 応答性の向上がみられ, エアタービンハンドピースのタービン翼にプラスチックを用いることは十分な可能性があることがわかった.
  • 片倉 直至, 細谷 誠, 高田 雄京, 飯島 一法, 本間 久夫
    1992 年11 巻2 号 p. 379-384
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    メタクリル酸ブチル(BMA)とメタクリル酸エチル(EMA)とを用い, 組成と分子量の異なる共重合体を懸濁重合法により合成した.これらの粉末とブチルフタリルグリコール酸ブチルとの混合物の貯蔵弾性率G', 動的粘性η'損失正接tanδの周波数および温度依存性を求めた.これらの測定値からG', η'およびtan δ のマスターカーブを作成することができた.G'やtanδに対するポリマーの分子量の影響が, 特に低い周波数領域で顕著にみられた.PBMA系の材料は, 長い側鎖の内部可塑化の影響を受けるので, PEMAを用いた従来の材料よりもG'が小さくなった.高周波数領域では, PBMA系のtanδはPEMA系のそれよりも小さく, 低周波数領域では逆に大きくなった.このような粘弾性特性は本材料にとって長所ともなり得るものである.すなわち, 従来の材料は経時的に固くなるのに対し, 試作材料はやわらかく, しなやかな性質を有する.共重合体の組成と分子量を適切に調節すれば, さらに優れた性質をもつティッシュコンディショナーの製造が可能であると思われる.
  • 川口 稔, 福島 忠男, 堀部 隆
    1992 年11 巻2 号 p. 385-389
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    粒子径の異なるシリカフィラー(平均粒子径:0.04, 0.3, 0.5, 1.0, 1.6, 3.9, 5.7μm)を配合したBisGMA径光重合型コンポジットレジンを試作し, 硬化深さにおよぼすフィラー粒子径の影響を検討した.いずれのコンポジットレジンも可視光線の照射時間の延長とともに硬化深さも増大した.0.3, 0.5および1.0μmのフィラーを配合したコンポジットレジンは他のフィラーを配合したコンポジットレジンに比べ小さな硬化深さを示した.また不定形フィラー(1.6, 3.9および5.7μm)では, フィラーの粒子径の増大に伴って硬化深さも増大した.
  • 根本 君也, 安藤 優, 伊藤 仁美, 堀江 港三
    1992 年11 巻2 号 p. 390-397
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    1ペースト型の歯冠用レジンを試作するために, 架橋性ポリマーの微球状粉が作られた.ジメタクリレートモノマーは粘度が高いので, 懸濁重合で作製することが難しい.ジメタクリレートのエタノール溶液に過酸化ベンゾイルとジメチルパラトルイジンを添加したところ, 常温で重合を開始し, 溶媒に不溶の粒子が析出した.エタノール中のジメタクリレートの量がポリマーの析出時間におよぼす影響を調べた.析出開始時間の逆数はモノマー量にほぼ比例して増加した.得られた直径約0.5μmの架橋ポリマー粒子とシリカの微粒子粉とを混合してフィラーとした試作レジン硬化物の耐摩耗性を測定した結果, 優れていることが解った.
  • 安藤 優, 根本 君也
    1992 年11 巻2 号 p. 398-409
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究は微球状シリカ粒子(MF)を種々の割合に混入したマイクロカプセル型有機複合フィラーの試作と, これを混入したコンポジットレジンの物性を検討したものである.粒子の作製方法は, MFとBPOを混入したジメタクリレートのエタノール溶液にアミンと水を徐々に加え, 相分離によって球状粒子を得る組成条件下で, MFを表面に配置した種々のマイクロカプセル型粒子(MCP)を常温で作製した.得られた粒子は15〜90%のMFを含む, 直径0.3〜6μmの球状粒子であった.シランカップリング剤で表面処理を行った種々のMCPおよびこれらのMCPとMFの混合物をフィラーとする各種コンポジットレジンを試作し, 硬化物の機械的性質を測定した.その結果, 約8〜65vol%のMFを含む各MCPをフィラー(55wt%)とした硬化物の曲げ強さは, いずれも100MPaであり, 65vol%のMFを含むMCPを種々の割合で混入したコンポジットレジン硬化物の曲げ強さは, 50vol%以上のとき, 100MPa以下になった.また, MCPとMFを混合したフィラーを含むコンポジットレジンにおいて, MFが50〜60vol%混合の場合, たわみが大きく, 弾性率は600MPa, ロックウェル30W硬さは60, 曲げ強さは120MPa以上で試作コンポジットレジン中で最大値が得られた.さらに, MFと試作MCPとを混合してフィラーとして用いるとコンポジットレジン中のフィラー混合率を大きくすることができ, しかも曲げ強さ, 弾性率, たわみが共に大きくなり, 靱性の大きいコンポジットレジンを得ることができる.
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