日本における健康保険用金銀パラジウム合金中の金含有量はJIS T6106によって12mass%に定められている.この論文は, 鋳造用金銀パラジウム合金の金含有量を増加することによる合金の機械的性質および耐変色性に与える影響を明らかにするために行ったものである.すなわち, パラジウムを20%に一定し, 金を12, 16, 20%に, 銅を5, 10, 15, 20%に変えた12種の合金を溶製し, 歯科精密鋳造法に準じて鋳造した試験片の機械的性質と耐変色性を調べた.軟化熱処理(800℃, 3min溶体化処理後水中急冷, Q)・硬化熱処理(450→250℃/30min炉冷, H)時の引張強さ, 伸び, ビッカース硬さ(Hv)は主として銅含有量によって変化し, 一般に, 銅含有量が増すほど, 引張強さ/耐力/弾性限およびビッカース硬さが増加し, 伸びが低下する.金量を増すと僅かに耐変色性が増加し, 金20%, 銅約12%以下の組成範囲で変色試験後のL*が70以上となること, 20Au-5Cu-20Pd-55Ag合金を除いて, 液相点は1, 100℃以下であること, 銅量が増すにつれて, 軟化熱処理時のα固溶体の格子定数は小さくなり, また, 金量を増加するとα化の温度が低下することなどを示した.