歯科材料・器械
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15 巻, 5 号
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原著
  • 鬼塚 雅, 門川 明彦, 松下 容子, 自見 忠
    1996 年15 巻5 号 p. 369-378
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    消毒液浸漬が石こう模型に与える影響を調べるために, 2種類の石こうを用い, ビニルシリコーン印象により作製した石こう模型を3%グルタルアルデヒドに浸漬した試料, および印象体を消毒液に浸漬した後に石こう模型を作製した試料について, 模型の寸法変化率の測定, 細線再現性試験, SEM観察を行った.細線再現性試験の結果, 未浸漬試料, および印象を消毒液に浸漬後石こう模型を作製した試料では20μmの細線を再現したが, 石こう模型作成後消毒液に浸漬した試料は20μmの細線を再現しなかった.SEM観察の結果, 消毒液浸漬, 水浸漬いずれにおいても, 表面粗さの測定値が大きな試料において, 石こう表面の細線の輪郭が不明瞭となった.また, 表面に多数の気泡が生ずる現象が認められた.これらの結果より, 石こう表面に与える影響はアルデヒドより水が大きいことが示唆された.
  • 鬼塚 雅, 門川 明彦, 松下 容子, 自見 忠
    1996 年15 巻5 号 p. 379-388
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    超硬質石こうが消毒液により被る被害を調べるために, 消毒液として, 3%グルタルアデヒド, 3%緩衝グルタルアルデヒドそして市販の2%緩衝グルタルアルデヒド, および水を用いた.結果はグルタルアルデヒドと水で表面粗さが増大した.しかし, グルタルアルデヒドのpHの調整で表面粗さの改善が認められた.SEM像では水浸漬試料の表面に多数の陥没が見られた.コントロールとして用いた未処理硬質石こうと比較して, 表面と同様に石こう結晶間の間隙が広がった.グルタルアルデヒド浸漬では溝周囲に多数の微細孔が出現し, 結晶の間隙および表面に顆粒状の沈着物が認められた.緩衝グルタルアルデヒド浸漬ではコントロールと比較して, ほとんど変化のない部分と結晶間が多数の顆粒状沈着物で被われたところ, そして表面が顆粒状沈着物で被われたところを認めた.市販の緩衝グルタルアルデヒド溶液は, 緩衝グルタルアルデヒドと同様の像であったが, 糸束状の結晶様沈着物が認められ, 表面粗さ結果とSEM像の結果とが一部異なっていた.
  • 藤島 昭宏, 久根下 斎, 宮崎 隆
    1996 年15 巻5 号 p. 389-394
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    3種類の歯冠用硬質レジン(MFTタイプコンポジットレジン)の耐久性を評価するために, 水, 乳酸, 塩酸, 水酸化ナトリウム, アセトン, エタノール, 大気などの種々の条件下に1週間および1ヵ月保管後の材料の硬さおよび引張強さの測定, 表面のSEM観察を行い, 以下の知見を得た.3種類の材料は, アセトン条件において最も大きな劣化を生じ, 次いでエタノール, アルカリ条件においても顕著な劣化を生じていたが, 酸条件および水の影響は小さかった.劣化を生じた条件下での材料の表面SEM像から, 有機複合フィラーとマトリックス界面に沿った亀裂が明瞭に観察された.材齢1ヵ月の試験片の硬さと引張強さには一次の相関関係が認められ, 小型直接引張試験と浸漬条件を組み合わせることにより, 1ヵ月程度でコンポジットレジンの耐久性を評価できることが認められた.
  • 日比野 靖, 倉持 健一, 巽 真由賀, 橋本 弘一, 赤岩 祐一, 安藤 芳昭
    1996 年15 巻5 号 p. 395-402
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    リン酸4カルシウムにInF_3・3H_2Oを1, 2, 3, 5ならびに20wt%添加・混合し, 大気中1, 400℃で2時間焼成を行った後急冷した粉末を作製した.この粉末とクエン酸-リンゴ酸水溶液を粉液比1.0(g/g)にて練和を行い, 硬化体を作製した.ADAS No.61に準じて硬化時間を測定するとともに, 硬化体の圧縮強さならびに崩壊率の測定を行った.また, 作製した粉末に関して角度範囲25〜40°(2θ)の条件にてX線回折パターンの測定を行った.その結果, InF_3・3H_2Oの添加量が2wt%まではリン酸4カルシウムの基本X線回折パターンに変化が認められなかった.得られた硬化体の物性について, InF_3・3H_2Oの添加量の増加に伴い硬化時間は有意に長くなった.また, 崩壊率は有意に大きくなり, 圧縮強さに関しては有意に小さくなった.
  • 宮﨑 顕道
    1996 年15 巻5 号 p. 403-419
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    口腔内温度付近で収縮する形状記憶型シリコーンゴムを試作した.この試作ゴムについて, 収縮力をはじめ浸漬後の引張り試験や伸張後の荷重変化および変色試験, そしてラット皮下への埋入試験, 更に, 歯科矯正用弾性材料としての応用性を調査し, 臨床応用の可能性について検討した.その結果, 収縮力は255.6±33.5gfを発揮し, 歯の移動に十分利用できると考えられた.浸漬後の引張り強さとひずみの経時的変化は少なく, 口腔内でも安定した物性が維持できると考えられた.また, 伸張後の荷重変化は, 蒸留水中において市販ポリウレタン製材料に比べ減少は少なく, 生理食塩液中での変色も少なかった.そして, 皮下埋入試験では生体為害性のないことが確認された.更に, 保定装置のワイヤー被覆に応用した場合, 目立ちにくい良好な審美性を得ることができた.以上の結果, 試作した形状記憶型シリコーンゴムは歯科矯正用弾性材料として臨床応用の可能性が示唆された.
  • 榊原 茂弘
    1996 年15 巻5 号 p. 420-427
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    埋没材スラリーを注入した鋳造用リング内での5群のセラミック系ライナー(A群:ロックウール系, B群:セラミックファイバー低温系, C群:セラミックファイバー標準系, D群:セラミックファイバー低温〜標準系およびE群:カオリン系)の吸水挙動について, 埋没材スラリー注入量および埋没材の操作時間を測定して検討した.その結果, δV(ライナーが吸水しないと規定した場合より増加した埋没材スラリー体積)は, A群の3種のライナーおよびD群のNA14では0.59〜1.55cm^3を示したが, 他のライナー11種では-0.23〜0.26cm^3を示した.アスベストリボン3種のδVは, 0.57〜1.81cm^3を示した.δV/空隙量の比率は, A群の3種, D群のNA14およびアスベストリボンでは43〜115%で, 他はいずれも15%未満であった.操作時間は, A群のNA1, C群のNA9およびD群のNA13の3種のライナーではライナー内張りなしより延長し, 他の12種のライナーおよびアスベストリボン3種では短縮した.埋没材スラリーの実効混水比と計算混水比とを比較すると, ライナーは, 実効混水比と計算混水比とがほぼ一致するライナー群および実効混水比が計算混水比より大きな値を示すライナー群に大別された.
  • 中村 英雄, 高橋 英和, 西村 文夫
    1996 年15 巻5 号 p. 428-436
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    歯科鋳造用銀合金の疲労強度に及ぼす試片形状と負荷応力の影響を検討した.スクリューを利用したスクリュー型試片と平行部と把持部を有するダンベル型試片で引張試験を, 直方体試片で曲げ試験を行った.ステアケース法を用いて疲労試験を行い, 10^5回に対する疲労強度を求めるとともに, 引張強さおよび曲げ強さを求めた.その結果, スクリュー型試片で疲労強度が58.6MPa, 引張強さが180.3MPa, これらの比が0.325, ダンベル型試片で疲労強度が105.6MPa, 引張強さが193.3MPa, これらの比が0.546, 直方体試片で疲労強度が172.6MPa, 曲げ強さが411.7MPa, これらの比が0.419であった.このことより, 試片形状, 負荷応力が異なると, 疲労強度が異なるだけでなく, 疲労強度の引張強さもしくは曲げ強さに対する比も異なることが判明した.
  • 吉田 隆一, 岡村 弘行, 須田 勇己
    1996 年15 巻5 号 p. 437-445
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    チクソトロピー現象の大きい合成雲母である, 膨潤性のスメクタイト2種SWN〔Na0.33(Mg2.67Li0.33)Si4O10(OH)2〕, SWF〔Na0.33(Mg2.67Li0.33)Si4O10F2〕をこの実験に用いた.濃度は0, 0.5, 1.0, 1.5, 2.0%と変化させた.これらの液でクリストバライト埋没材を(標準混液比)練和したときの流動性, 硬化膨張率, 熱膨張率, 加熱前後の熱膨張差, 経時的な圧縮強さの変化, 加熱前後の圧縮強さを調べ以下の結論を得た.1.流動性では水が最もよく, 次がSWFであった.SWNは0.5%水溶液でも流動性が小さかった.2.硬化膨脹率では, スメクタイトの濃度が上がると硬化膨張率は大きくなった.また, その効果はSWNの方が大きかった.3.700℃における熱膨張率は水が最も大きく, 次がSWNであった.SWFは熱膨張率が小さくなった.4.圧縮強さではSWNの濃度を増すと強さは下がった.SWFではわずかに上昇した.また, 未加熱試料では濃度が増すと強さは下がり, 加熱試料では濃度が増すと上昇した.
  • 門磨 義則
    1996 年15 巻5 号 p. 446-453
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    貴金属合金に対する接着性モノマーとしてチイラン系モノマーである2, 3-エピチオプロピルメタクリレート(EP1MA)と4, 5-エピチオペンチルメタクリレート(EP3MA)を合成した.被着体合金として金合金, パラジウム合金および銀合金を用いた.鏡面研磨した被着体の表面にチイランのエタノール溶液を塗布して1日放置した.チイランの濃度が高い(1mol%)場合には, レジンの接着に先立って処理した表面を洗浄した.2個の合金の試料同士をMMA-PMMA系レジンで突き合わせ接着させた.接着させた試料に4と60℃の熱サイクルを2, 000回負荷した後, 引張接着強さを測定した.貴金属合金の表面をEP1MAあるいはEP3MAで処理すると接着強さが有意に向上することが認められた.その効果はEP1MAよりもEP3MAの方が優れていた.合金をEP3MAで処理しMMA-PMMA/TBBO系レジンで接着させた場合は, 表面処理剤中のEP3MAの濃度を1から0.01mol%に減少させても高い接着強さが維持された.
  • 小林 幸隆, 宮崎 隆, 李 元植
    1996 年15 巻5 号 p. 454-458
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    試作の白金-アンチモン系ろうおよび白金-パラジウム-アンチモン系ろうを用いて, アルゴン雰囲気下で赤外線加熱方式により, チタン棒の接合を検討した.接合部のSEM観察の結果, 試作ろうは母材表面によく濡れ, 良好な接合を得ることができた.金属組織の観察およびEPMA分析の結果, 接合界面に中間合金層を生成していることが認められた.試作の白金ろうで接合した試験片の引張強さは, 市販のチタン系ろうで接合した試験片のそれよりも有意に小さかった.これらの所見より, 試作の白金ろうの適用は荷重負担のない部位に限定されると考えられた.
  • 新井 泉, 増田 一郎, 浜﨑 辰夫, 佐藤 和子, 佐藤 温重
    原稿種別: 本文
    1996 年15 巻5 号 p. 459-466
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 細胞毒性試験における細胞周期の解析を行うための新しいシステムダイナミクスモデルを開発することである.作成した解析法は, CdCl2およびPb-EDTAに48時間曝露されたVMCsおよびLMCs骨芽細胞から得られたDNAヒストグラムについて動的特性の再現性を試験した.シミュレートしたヒストグラムは, 実験で得たDNAヒストグラムを再現していた.このシステムダイナミクスモデルを用いた解析により, CdCl2は細胞周期のS期およびG2期滞在時間を延長すること, また, Pb-EDTAはG1期からS期への移行を抑制することが確認できた.本研究で得られた新しい解析法は, 細胞毒性を有する化学物質の細胞周期の相に対する作用点を明らかにする上で, また, 細胞周期を動的に解析する上で有用であることが明らかとなった.
  • 荒川 仁志, 黒岩 昭弘
    1996 年15 巻5 号 p. 467-478
    発行日: 1996/09/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    臨床における鋳造体の必要条件は内部欠陥, 外部欠陥がなく, 正確に適合することである.多くの研究者により各金属の適合についての検討を金型を用いて行われてきた.しかしそれらの鋳造体は臨床の鋳造冠と比較して厚いのが実情である.そこで本研究は各金属における鋳造冠の厚さが適合性に及ぼす影響について検討した.その結果, 以下の結論が得られた.1.鋳型を統一した場合, パターンの厚さが増加すると高融点の金属は鋳造収縮が大きく認められた.2.各埋没材にAg-Pd-Au合金を用い鋳造したとき, パターンの厚さの増加は適合性にほとんど影響しなかった.3.各埋没材に各金属を用い鋳造したとき, パターンの厚さの増加は, 埋没材の種類によって適合性に影響をしやすいものとしにくいものとが認められた.4.埋没材の硬化膨張と熱膨張測定装置によって得られた熱膨張量の値は必ずしも鋳造冠の適合と一致しなかった.
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