抄録
歯質の機械的性質に加齢が及ぼす影響を検討する目的で, 1.5〜6歳の歯年齢で分類した牛下顎第一切歯を用いてダンベル型の試片を作製し, 引張試験を行い, 引張強さおよび弾性を示唆する応力変位曲線上の直線部の傾きを求め, 破断面をSEM観察した.応力変位曲線上の直線部の傾きは, 各群間で有意差は認められなかった. 引張強さは加齢により若干の減少を示したが有意差は認められなかった. 引張強さについてワイブル統計解析を行ったところ, 尺度パラメーターはほぼ一定の値であったが, ワイブル係数は11.4, 10.2, 9.6, 6.3と加齢とともに減少する傾向を示した. 破断面観察では加齢による象牙細管の狭窄が確認された.