歯科材料・器械
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16 巻, 3 号
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原著
  • 藤田 栄伸, 山下 敦, 鈴木 一臣
    1997 年16 巻3 号 p. 165-174
    発行日: 1997/05/26
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    支台築造では, 根管内の深層象牙質との接着が重要である.しかし, 接着性レジンの深層象牙質に対する接着強さの低下が知られている.そこで, 牛歯歯根部深層象牙質を用いて市販の4種類の接着性レジンセメントの深層部象牙質に対する接着強さを歯冠部浅層象牙質と比較するとともに, リン酸と次亜塩素酸ナトリウム水溶液を併用した処理法(NC処理)の歯根部深層象牙質に対する処理効果を剪断接着強さと接着界面のSEM観察によって検討した.その結果, 市販の接着性レジンセメントをメーカー指示で用いた場合, いずれの接着性レジンセメントも接着性能の低下が認められた.一方, NC処理は, 特に歯根部深層象牙質に対する処理効果が高く, いずれの市販接着性レジンセメントシステムと比較しても有意に高い接着性能が得られ, さらにサーマルサイクルによる接着強さの低下もほとんど認めず, 接着に際して一般的には不利と考えられてきた歯根深層部象牙質に対してNC処理が有効であることが示唆された.
  • 荒尾 武文, 中林 宣男
    1997 年16 巻3 号 p. 175-181
    発行日: 1997/05/26
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    試料に均一な応力が加えられた時, 引張強さが最も弱い部分で破断されるダンベル型試料を用いて, ウシ象牙質への4-META/MMA-TBBレジンの接着を解析した. 流水下#600研削された象牙質を, 10%クエン酸-3%塩化第二鉄(10-3)でそれぞれ 10 秒間, 30 秒間あるいは 60 秒間脱灰した後, レジンを接着し, 接着面が 3.0×2.0 mmのダンベル型に接着試料を加工した.これを用いた引張接着強さは, 10秒群で 20.5 MPa, 30秒群で16.2 MPa, 60秒群では 12.7 MPaであった.破断面のSEM 観察により, いずれの試料でも残留脱灰象牙質での破壊が認められた. すなわち一日水中浸漬ダンベル型試料を用いた試験により, これまで検出が難しかった引張強さの弱い欠陥と思われる脱灰象牙質の残留を, 確実に見出せることがわかった.
  • 土居 寿, 王 鉄軍, 中野 毅, 小林 郁夫, 米山 隆之, 浜中 人士
    1997 年16 巻3 号 p. 182-186
    発行日: 1997/05/26
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    チタンの歯科応用のために歯科鋳造用チタン合金の開発が進められている. Ti-6Al-4V 合金は生体用合金としては, 組成元素であるバナジウムの為害性や力学的性質, 鋳造性の問題が指摘されている.そこで, Ti-6Al-4V 合金のバナジウムをニオブで置換した生体用合金として Ti-6Al-7Nb 合金が開発された. 著者らはこの合金の鋳造性や鋳造体の力学的性質などについて検討した結果, 歯科鋳造用として優れていることがわかった. そこでこの研究では, チタン, Ti-6Al-4V合金およびTi-6Al-7Nb合金を, 通常の歯科用チタン合金と同様の方法で精密鋳造し, 1.0%乳酸中での長期浸漬試験を行った. その結果, Ti-6Al-7Nb 合金から溶出する Ti イオンの量は, Ti-6Al-4V 合金から溶出する量よりも少なく, 歯科鋳造用チタンと同程度であることがわかった.
  • 礪波 健一
    1997 年16 巻3 号 p. 187-196
    発行日: 1997/05/26
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    歯質の機械的性質に加齢が及ぼす影響を検討する目的で, 1.5〜6歳の歯年齢で分類した牛下顎第一切歯を用いてダンベル型の試片を作製し, 引張試験を行い, 引張強さおよび弾性を示唆する応力変位曲線上の直線部の傾きを求め, 破断面をSEM観察した.応力変位曲線上の直線部の傾きは, 各群間で有意差は認められなかった. 引張強さは加齢により若干の減少を示したが有意差は認められなかった. 引張強さについてワイブル統計解析を行ったところ, 尺度パラメーターはほぼ一定の値であったが, ワイブル係数は11.4, 10.2, 9.6, 6.3と加齢とともに減少する傾向を示した. 破断面観察では加齢による象牙細管の狭窄が確認された.
  • 井上 貫, 武田 昭二, 中村 正明
    1997 年16 巻3 号 p. 197-205
    発行日: 1997/05/26
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    円板状のチタンプレート上で球状に成形した6種類の修復材料を旋回させて動的抽出した後, 試料の重さ, 旋回速度および抽出期間の諸条件を変えて抽出液および濾液を採取し, それらの細胞生存率への影響を検討した.その結果, チタンプレートとタイプIII金合金, 金銀パラジウム合金, チタンおよび化学重合型コンポジットレジンとを組み合わせた場合, いずれの抽出条件においても細胞生存率は対照群とほぼ等しかった.チタンプレートとコバルトクロム合金およびニッケルクロム合金の組み合わせでは, 試料の重さ, 旋回速度あるいは抽出期間の増加とともに細胞生存率は減少した.また, 抽出液と濾液の細胞生存率に差は認められなかった.さらに, 血清添加培養液中で抽出すると, 細胞生存率は低下した.抽出条件によって組み合わせ間で細胞生存率に相違が認められ, 本試験法が材料間の動的接触を考慮した試験法として有効であることが明らかとなった.
  • 遠藤 泰生, 堀口 英子, 黒岩 昭弘
    1997 年16 巻3 号 p. 206-217
    発行日: 1997/05/26
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    チタン鋳造に関する研究が数年前から行われている.しかしながら, チタンは鋳造に関する鋳造欠陥などの問題を持つ.近年, 新しい鋳造機や埋没材が発表されている.ところが, 多くの鋳造システムが紹介されたため, 逆に, これらのシステムの選択は非常に困難なものとなった.これはチタン鋳造の普及に対して大きな問題となっている.本研究では異なった鋳造システムにおける鋳型温度が鋳込率に及ぼす影響を検討した.各鋳造方法において鋳型温度は鋳込率に影響を及ぼし, それらには相関関係があった.また, 鋳型温度の鋳込率に対する影響は鋳造方法によって異なる傾向を示し, 適切な鋳造力が設定された場合, 鋳型温度が鋳込率に与える影響は少なかった.
  • 藤島 昭宏, 宮崎 隆, 藤島 由香里, 芝 [アキ]彦
    1997 年16 巻3 号 p. 218-226
    発行日: 1997/05/26
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    レジン前装チタンクラウンを製作する基礎的研究として, ノンリテンションビーズ法を想定した, 被着体としてのチタンの表面性状に及ぼすサンドブラスト処理の影響について, コバルトクロム合金と比較した.実験には平均粒径50, 110, 250μmの3種類のアルミナ粉末を用いて, 金属の板状試験片に対し処理圧力0.25〜0.45 MPaで5〜30秒間サンドブラスト処理を施し, その表面性状の変化を計測した. サンドブラスト処理による試験片の重量損失は, 処理時間の増加とともに単調に増加したが, アルミナ粒径の相違による影響は小さかった. チタンの重量損失は, コバルトクロム合金と比較して顕著に小さかったが, 体積損失に換算するとほぼ同一の値を示した. 反射電子(BSE)像から, 試験片表層にはサンドブラスト処理に用いたアルミナ粒子が明瞭に観察され, BSE像の画像解析から面積比の概算値で54〜61%のアルミナがチタン処理面上に存在していた. X線微小分析の結果, 10秒間のサンドブラスト処理でチタン上には33〜45 wt%, コバルトクロム合金上では22〜42 wt%のアルミナが検出された. また, 処理に用いたアルミナ粒径が小さくなるほど, アルミナの存在量は大きくなったが, 処理時間, 圧力の影響は小さかった. チタンでは処理圧を低下させることにより, 試験片の変形量は顕著に減少したが, 表面粗さの低下は小さかった. これらの結果から, チタンに対するサンドブラスト処理は, 他の非貴金属合金に対するよりも低圧力, 短時間の処理を行うほうが好ましく, またサンドブラスト処理によるアルミナ汚染の影響が避けられないため, サンドブラスト処理面に対する接着は, 金属だけではなくアルミナに対する接着性も考慮する必要性が示唆された.
  • 藤島 昭宏, 宮崎 隆, 藤島 由香里, 芝 [アキ]彦
    原稿種別: 本文
    1997 年16 巻3 号 p. 227-231
    発行日: 1997/05/26
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    3種類の異なる粒径のアルミナ粉末(50μm, 110μm, 250μm)を用いて, サンドブラスト処理を施したチタン表面に対する各硬質レジンの有する接着強さを測定した.また, エメリーペーパー#1500まで研磨したチタンとアルミナ焼結体に対する接着強さを測定し, ノンリテンションビーズ法によるレジン前装チタンクラウンの適用について検討した.チタン研磨面に対し, アルミナ粉末によるサンドブラスト処理を施すことにより, 硬質レジンの接着性は増加する傾向が見られ, 最も粒径の大きい250μmアルミナ粉末を用いた場合で最高の接着強さを示したが, 110μmアルミナを用いた場合の接着強さとの有意差は認められなかった.また, 50μmアルミナによるサンドブラスト処理が硬質レジンの接着性向上に及ぼす影響は小さかった.チタンに対して良好な接着性を示したNMC, CSDシステムでは, アルミナ焼結体に対して有意に小さいせん断強さを示した.このため, サンドブラスト処理による, チタン表面へのアルミナの残留は, 硬質レジンの接着性向上には関与しないことが認められた.
  • 戸井田 哲也, 中林 宣男
    1997 年16 巻3 号 p. 232-238
    発行日: 1997/05/26
    公開日: 2018/12/22
    ジャーナル フリー
    リン酸による脱灰は象牙質構成たんぱくを変性させるため, その脱灰象牙質は乾燥により収縮する.収縮した脱灰象牙質のモノマー透過性は低いため, 樹脂含浸象牙質をそこに生成させることは難しい.研削面が保護された接着試料の縦断面を塩酸, 次いで次亜塩素酸ナトリウムに浸漬させた後SEMで観察し, 10%リン酸で脱灰後, 水洗, 乾燥により収縮した脱灰象牙質にプライマーが拡散して生成される樹脂含浸象牙質の厚さと, プライマーに溶解させた疎水性基と親水性基を持つメタクリレート(HPPM, 4-MET, Phenyl-P)の関係を調べた.その結果, モノマーの拡散を促進できるメタクリレートを30%HEMAプライマーに溶解させることは, 収縮した脱灰象牙質のモノマー透過性を向上させ, そこに樹脂含浸象牙質を生成させる上で有効であり, その効果は溶解するモノマーの構造に関係していることがわかった.
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