抄録
懸垂式分銅を用いた摩擦試験機を新たに試作し, 審美FRPおよび各種市販矯正用ワイヤーとブラケット内面との摩擦特性を一面接触および直行する両面に対する二面接触状態で測定し比較した.本試験機によりワイヤー, ブラケットスロット間の幾何学的関係に由来する影響を排除し, 純粋に素材間の摩擦特性評価が可能となった.二面接触状態での摩擦力は, 一面接触時の√<2>倍という予測値よりもやや高い値を示すが, 両接触条件ともに類似した摩擦特性を示した.FRPワイヤーは多結晶アルミナブラケットに対しては, 大きな摩擦抵抗を示すが, 単結晶アルミナ, ポリカーボネート, およびステンレス製の各ブラケットに対しては, 金属ワイヤーとほぼ同等の摩擦特性を示した.臨床的な状況下における摩擦特性は素材間の表面摩擦特性だけではなく, ワイヤーとブラケットの幾何学的関係やワイヤーに作用する矯正力にも影響をうける可能性が示唆された.