抄録
Ni-Ta系合金を歯科臨床に使用する場合の生体に及ぼす為害作用を検索するため, 純NiならびにNi-10wt%Ta, N-20wt%Ta, Ni-30wt%Taの合金とヒト歯肉由来の線維芽細胞との親和性について組織培養にて検討した.合金の線維芽細胞に対する生物学的親和性は合金試料周囲の細胞の形態観察ならびに培養皿全体に増殖した細胞数の算定によって評価した.その結果, Ni-20wt%TaとNi-30wt%Ta合金周囲の線維芽細胞は金属イオンによる障害がほとんど認められず, 正常な細胞の形態と細胞増殖が観察された.細胞数の算定では線維芽細胞はいずれの合金試験片についても対照群に相応して経時的に増殖し, その細胞数に大差はなかった.以上より, Ni-20wt%TaからNi-30wt%Ta組成範囲の合金は歯科用合金ならびに生体材料として臨床応用の可能性が示唆された.