抄録
合成ハイドロキシアパタイト-ポリアクリル酸複合材によるセメント(グラスアイオノマーセメント媒体による)を試作した.試作セメントの圧縮強度はハイドロキシアパタイトの焼成温度を高くしていくにしたがってよくなり, 1, 400℃焼成のハイドロキシアパタイトを用いることにより, 1, 300kg/cm2まで達した.この強度の増加はP/W比の増加, 1, 300℃以上でのHAPからTCPへの分解反応等が寄与していることがわかった.また, 1, 300℃以上で焼成したHAPと, PAAとの反応では, COO-Caの結合が生ずることがわかった.一方, このセメントを比較的若年者の10歯を用いて, 病理組織学的に検討したところ, 充填後1ヵ月間では, 病的歯髄反応は認められなかった.