抄録
義歯床用レジンに対し炭素繊維(CF)クロスで補強を施した場合, クロスの厚みおよび枚数の変動に対する曲げ, 引張りおよび衝撃強さへの影響, またはADA規格によるたわみ量よりみた口腔内装着時の実用性について検討を試みた. (1) CFクロス単層型においては, エポキシ樹脂処理(ECF)または塩化ラウロイル(LOCF)処理のクロスについては, それぞれ0.1, 0.2および0.4mm厚みのもの, (2) CFクロス積層型においては, 0.1mm厚のECFを2または4枚重ねの試験片を作製した.その結果, ECFクロスでは厚みおよび枚数の増加とともに複合レジンの上記諸物性は増大するのに対し, LOCFクロスの場合, 変化が認められなかった.またECF積層で補強された複合レジンの実用的許容度は, たわみ量から判定すると, 単層型で0.2mm厚, 積層型で0.1mm厚×2枚複合が限度であることが明らかになった.