抄録
Ti基で形状記憶効果を示すといわれているTi-V-Fe-Al系およびTi-Mo-Al系の数種の合金につきその特性を調べ歯科への応用の可能性を検討した.常温で板状試料を直径約17mmの半円状に曲げ変形させた後, 昇温し形状回復を測定した所, Ti-11V-2Fe-3AlおよびTi-11.5V-2Fe-3Al合金ではAs点に対応する90℃および60℃で, 形状回復を始め210℃では97%および63%の形状回復率を示した.また30℃に冷却した後も回復はほぼ保たれた.一方Ti-Mo-Al系では今回実験したTi-11.2Mo-3.4Al, Ti-14.1Mo-3.4Alでは, いずれも形状記憶効果が不十分で, 更に組成の調整が必要である.またTi-Mo-Al系およびTi, Ti-6Al-4Vおよび典型的な形状記憶効果を示すTi-Niの1%NaCl水溶液中でのアノード分極を測定し, その耐食性を比較した.その結果, いずれも約1, 100mVまで不動態被膜の形成による電流の平担部を示すが, その後Ti-Niでは被膜の破壊による急激な電流増加が見られた.一方これ以外のTi系合金では, 1, 500mV位に小さな電流のピークは出るが, その後また平担となり純Tiと同じ傾向を示しTiなみの耐食性が期待できる.以上の結果から特にTi-11〜11.5V-2Fe-3Al系合金は, 機械的性質など今後検討せねばならないが, 歯科インプラント材の可能性を持つ材料といえる.