歯科材料・器械
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4 巻, 2 号
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原著
  • 岡崎 正之, 高橋 純造, 木村 博
    1985 年4 巻2 号 p. 81-85
    発行日: 1985/03/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    模擬歯根膜としての変性コラーゲンであるゼラチンの水中での不溶化特性を検討した.DTA, IR分析では, グルタールアルデヒド溶液により, ゼラチンの不溶化が行なわれていることがわかった.このゼラチンを市販コンポジットレジンの表面に塗布し, 剪断引張試験を行なったところ, ゼラチン濃度約10wt%前後で接着力は最大値を示した.この接着力は, コンポジットレジンの種類によってさほど大きな差はなく, むしろ表面性状の違いによる差の方が大きかった.水中での値は空気中の値に比べて1/10以下に低下したが, 少なくとも2週間までは維持された.グルタールアルデヒド溶液は5%程度で十分であり, 処理時間は1時間以上の長時間に及ぶ方が効果的であることがわかった.
  • 川口 稔, 福島 忠男, 宮崎 光治, 堀部 隆, 森澤 宣生
    1985 年4 巻2 号 p. 86-91
    発行日: 1985/03/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    歯科用レジン材料の理工学的性質を向上する目的で, 三官能性メタクリレートであるtris (2-methacryloxyethyl) isocyanurate (TMEIC) をtris (2-hydroxyethyl) isocyanurateとmethacryloyl chlorideとより合成した.TMEIC-MMA共重合体とtrimethylol propane trimethacrylate (TMPT)-MMA共重合の理工学的性質を測定し, メタクリレートの分子構造と物性との相関について検討を加えた. 1) TMEIC-MMA共重合体の圧縮強さ, 弾性係数, ヌープ硬さはTMEIC濃度の増加に伴い増大したが, 曲げ強さは濃度とともに低下する傾向を示した. 2) TMEIC-MMA共重合体の吸水量はTMEIC濃度の増加とともに増大した. 3) TMEIC-MMA共重合体はTMPT-MMA共重合体よりも優れた理工学的性質を示した.
  • 入江 正郎, 鈴木 一臣, 田仲 持郎, 中井 宏之
    1985 年4 巻2 号 p. 92-96
    発行日: 1985/03/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    著者らは, 歯質と強固に接着するレジン系修復材の開発の一環として, 種々のアミノ酸メタクリレートを合成した.その中で, N, O-dimethacryloyl tyrosine (DMTY) が, 歯質と接着することを見いだした.そこで, DMTYとHEMAとを基材としたレドックス重合型ボンディング材を調製し, 人の歯の象牙質とコンポジットレジンとの接着に用いた.今回, ボンディング材中のDMTY濃度および触媒の種類とその添加量が接着強さにおよぼす影響について検討した.その結果, DMTY (30)-HEMA (70mol%)に対して, BPO:1.0wt%およびベンゼンスルフィン酸ナトリウム:1.0wt%添加した組成は, 象牙質の研磨(JIS. 600番サンドペーパー)面に44kg/cm2の接着強さを示した.
  • 吉成 正雄
    1985 年4 巻2 号 p. 97-105
    発行日: 1985/03/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    Type IV金合金イオンプレーティングを非貴金属系合金に施し, 変色試験, 摩耗試験および膜の形態的, 組成的調査を行った. (1) イオンプレーティングを施すことによって, Ag-In合金, Ag-Cu合金の耐変色性は改善された. (2) 各種材料に対するプレーティング膜の摩耗は, Type IV金合金に対しては大きく, porcelainおよび人歯enamelに対しては小さかった. (3) プレーティング膜に対する各種材料の摩耗は, Type IV金合金, Ag-In合金が大きく, Ni-Cr合金, porcelainおよび人歯enamelが小さかった. (4) プレーティング膜は微結晶から成っていた. (5) プレーティング膜の組成は原合金と比較し変化した.また膜内における成分元素の分布は均一ではなかった.以上の理由は主に成分元素の蒸発速度の差によるものと推察された.
  • 阿部 義人, 中林 宣男
    1985 年4 巻2 号 p. 106-111
    発行日: 1985/03/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    親水性基と疎水性基を有するメタクリレートは歯質へのモノマーの浸透性を促進し, 歯質への接着に有効であることが報告されてきた.HPPM, HNPM/MMA-TBBレジンはエナメル質への接着促進効果だけしか認められなかった.その後, 10-3溶液で処理した象牙質では, 脱灰中における酸によるコラーゲンの変性が抑制されるために, 4-META/MMA-TBBレジンが18MPaという強力な接着強さを得るに到った.そこで, HPPM, HNPM, 4-META/MMA-TBBレジンのエナメル質, 象牙質に対する接着を再検討し, モノマーの浸透性と歯質への接着について考察した.その結果, HPPM, HNPMは4-METAよりも歯質への浸透性が弱いため, 脱灰象牙質の最深部や未脱灰の象牙質まで拡散できないので, 脱灰象牙質層の引張り破断があらわれることがSEM観察から解明された.
  • 飯塚 秀人, 加藤 保雄, 飯島 清人, 竹井 満久, 長谷川 清, 大橋 正敬
    1985 年4 巻2 号 p. 112-116
    発行日: 1985/03/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    より正確な電気的根管長測定法の確立を目的とする基礎的研究の一環として, 先に教室の臼井は測定器内の抵抗値および周波数の変化がメーター指示値に影響を及ぼす変動要因であることを報告した.そこで今回, 著者らは, 同様に測定器内の抵抗値および周波数の変化がメーター指示値に及ぼす影響について, エンドテープ法を応用し臨床的検討を行った.その結果, メーター指示値は, 抵抗値を大きくするに従って上昇し, 周波数を大きくするに従ってわずかに上昇する傾向を示した.また, エンドテープ法を応用して測定した結果, 根管内の電導性物質の存在下でも測定が可能であった.
  • 宮崎 光治, 川口 稔, 福島 忠男, 堀部 隆
    1985 年4 巻2 号 p. 117-124
    発行日: 1985/03/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    修復用コンポジットレジンの試験温度, 吸水, サーマルサイクリングの影響を調べる為, 圧縮試験, 応力緩和測定および表面観察を行った.圧縮性質の保持率は温度上昇に伴って比例的に減少し, Silar, Clearfil-Fが高い値を示したが, Isopastの保持率が最も低くその値はPMMAレジンを下廻った.圧縮性質への吸水の影響は試験温度に比べて軽微であったが, 同じグループの中ではIsopast, Sevritonへの影響が大きかった.緩和速度に対する試験温度の影響は37℃以下では軽微であったが, Silarを除く材料は37℃以上で急激に速度が増大し, Isopastが最も大きかった.圧縮性質, 緩和速度および表面性状に対するサーマルサイクリングの影響は2, 000回以内では軽微であった.
  • 荒木 吉馬, 細谷 誠, 川上 道夫, 中西 道夫
    1985 年4 巻2 号 p. 125-133
    発行日: 1985/03/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    熱可逆性をもつ新しいタイプのエラストマー印象材(熱可塑性エラストマー印象材)を開発するため, その成分ポリマーとしてポリカプロラクトン-ポリ(ジメチルシロキサン)ブロックコポリマーを分子設計し合成した.分子末端に水酸基をもつポリカプロラクトン(単官能および2官能)と, 同じく水酸基(2官能)をもつポリ(ジメチルシロキサン)とをつなぐために, α, ω-ビス(ジメチルアミノ)オクタメチルテトラシロキサンをカップリング剤として使用した.その結果, 常温においてゴム弾性をもち, カプロラクトン・セグメントの融解温度55℃以上において, 賦形可能な状態になるブロックコポリマーが得られた.ブロックコポリマーの動的剛性率は25℃において, 0.2〜0.5MPa (20〜70Hz) であった.溶融粘度は分子量によって変化し, 2sec-1以上では分子量が高いもので900Pa・s以下, また分子量が低いもので200Pa・s以下であった.
  • 木村 博, 荘村 泰治
    1985 年4 巻2 号 p. 134-140
    発行日: 1985/03/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    Ti基で形状記憶効果を示すといわれているTi-V-Fe-Al系およびTi-Mo-Al系の数種の合金につきその特性を調べ歯科への応用の可能性を検討した.常温で板状試料を直径約17mmの半円状に曲げ変形させた後, 昇温し形状回復を測定した所, Ti-11V-2Fe-3AlおよびTi-11.5V-2Fe-3Al合金ではAs点に対応する90℃および60℃で, 形状回復を始め210℃では97%および63%の形状回復率を示した.また30℃に冷却した後も回復はほぼ保たれた.一方Ti-Mo-Al系では今回実験したTi-11.2Mo-3.4Al, Ti-14.1Mo-3.4Alでは, いずれも形状記憶効果が不十分で, 更に組成の調整が必要である.またTi-Mo-Al系およびTi, Ti-6Al-4Vおよび典型的な形状記憶効果を示すTi-Niの1%NaCl水溶液中でのアノード分極を測定し, その耐食性を比較した.その結果, いずれも約1, 100mVまで不動態被膜の形成による電流の平担部を示すが, その後Ti-Niでは被膜の破壊による急激な電流増加が見られた.一方これ以外のTi系合金では, 1, 500mV位に小さな電流のピークは出るが, その後また平担となり純Tiと同じ傾向を示しTiなみの耐食性が期待できる.以上の結果から特にTi-11〜11.5V-2Fe-3Al系合金は, 機械的性質など今後検討せねばならないが, 歯科インプラント材の可能性を持つ材料といえる.
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