抄録
著者らは, 新しい歯科用接着材料を開発する目的で光重合型ボンディングライナーに関する研究を行ってきた. 今回は, 触媒の検討を行うため, N, N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)の代わりとして, N-フェニルグリシン(NPG)を還元剤としたライナーを試作した. 接着促進モノマーとして, 4-メタクリロキシエチルトリメリット酸(4-MET), 2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルメタクリレート(HPPM), 2-メタクリロキシエチルp-メトキシフェニルリン酸(CH3O〜OH), 前処理剤としてpH 7.4に調製した0.5 M EDTA・2Na(EDTA5-0), あるいは0.3 M EDTA・2Na-0.2 M EDTA・Fe・Na(EDTA3-2)を用いた. その結果, EDTA3-2処理した牛歯象牙質に対し, CQ・NPG・4-METで8.4 MPa, CQ・NPG・CH3O〜OHで8.6 MPaの接着強さが得られた. しかしHPPMでは, 接着強さの向上は認められなかった. NPGは光重合触媒系で還元剤として作用し, さらにCQ, NPGと酸性モノマーである4-MET, CH3O〜OHを組み合わせることによって, ライナーの重合性の向上が認められた.