歯科材料・器械
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7 巻, 3 号
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原著
  • 遠藤 浩
    1988 年7 巻3 号 p. 325-339
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
    歯質に接着する複合材料は歯科治療の中で重要な役割を占めている. 本研究ではコンポジットレジンと歯質の接着性向上を目的としてグルタルアルデヒド, HEMA, MTYA (O-メタクリロイルチロシンアミド)を含む新しいプライマーを調整した. プライマーは, グルタルアルデヒド, HEMAとMTYAの濃度や組合せを変化させて調製した. ボンディング剤はクリアフィルニューボンド, コンポジットレジンはクリアフィルFIIを使用した. 接着後, 37℃水中1日浸漬後の接着強さを測定した. その結果, 1%グルタルアルデヒド, 35%HEMA, 3%MTYAを含むプライマー1-35 (MTYA)が, 象牙質への接着に最も効果的であった. 酸処理後, 1-35 (MTYA)を作用させた新鮮牛象牙質に対する接着強さは, 10%クエン酸処理で約10 MPa, 40%リン酸で約16 MPa, 10-3で約11 MPaとかなり良好であった. SEM観察では, 酸処理による象牙質の脱灰層の厚さと樹脂含浸層の厚さがほぼ一致した. エナメル質でも同様に接着試験を行なった. 40%リン酸処理で約25 MPaの良好な接着強さを得た. 以上の事実からプラマー1-35 (MTYA)は, コンポジットレジンと歯質の接着の向上に非常に効果があることが判明した.
  • 岡田 耕衛, 赫多 清, 小倉 英夫
    1988 年7 巻3 号 p. 340-354
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
    せっこうに含まれる硬化促進剤がせっこうと寒天印象材との適合性に及ぼす影響を明らかにするために, α半水せっこうを濃度の異なる硫酸カリウム, ロッシェル塩, 塩化ナトリウム水溶液で練和し, これを10%寒天に注入したときの表面粗さを測定した. また, せっこう表面のX線回折による分析, 電子顕微鏡による観察, および硬化時間の測定を行なった. その結果を要約すると次のようになる. 1) 10%寒天に注入したせっこうの表面粗さは, 使用した硬化促進剤溶液の濃度の増加に伴って減少した. 2) 表面粗さとせっこうの硬化時間との間には高度に有意な正の相関が認められた. 3) 硫酸カルシウム半水塩の回折線強度は, 硬化促進剤溶液の濃度の増加に伴って減少した. 硫酸カルシウム半水塩の回折線強度と表面粗さとの間には, 有意な正の相関が認められた. 4) 硫酸カルシウム二水塩の回折線強度は, 硬化促進剤溶液の増加に伴なって増加した. 硫酸カルシウム二水塩の回折線強度の対数と表面粗さとの間には, 有意な負の相関が認められた. 5) 硬化促進剤溶液を使用したせっこう表面には, 微細な針状結晶が多く認められた.
  • 菊地 久二
    1988 年7 巻3 号 p. 355-365
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
    本研究は, 光重合型コンポジットレジンの開発に関するもので, モノマーとして合成したシクロホスファゼンモノマー4PN-(TF)1-(EMA)7を用い, これにコモノマーおよびフィラーを配合した場合の物性について検討を行なったものである. 実験結果, 光重合型コンポジットレジンのモノマー組成としては, 4PN-(TF)1-(EMA)7モノマー80%にコモノマーとして2.6Eを20%配合し, 光増感剤としてCamphor quinone 0.28%, Benzil 0.12%およびEthyl p-dimethyl aminobenzoate 1.56%を加えた場合であった. 上記モノマー組成にフィラーを混合して, 光重合型コンポジットレジンを試作した結果, フィラーの混合量が増加するにしたがって曲げ強さおよび圧縮強さは増大し, 吸水量, 溶解量, 熱膨張係数および重合収縮率は低下した. 試作光重合型コンポジットレジンで, 最も良好な物性を示した場合は, 前述したモノマー組成にフィラーを80%混合した場合で, 曲げ強さおよび圧縮強さは, それぞれ90および303 MPaを示し, 硬さはHR 90.5を示した. 一方, 熱膨張係数および重合収縮率は, それぞれ15.4×10-6/℃および1.30vol%と小さい値を示した.
  • 上新 和彦, 藤井 孝一, 有川 裕之, 井上 勝一郎, 蟹江 隆人
    1988 年7 巻3 号 p. 366-370
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
    クラウンのような外側性パターンは埋没材の硬化時の膨張によって押し拡げられねばならない. そこで, ワックスパターンの抵抗によって埋没材の硬化時の膨張が抑制されることを想定して, 荷重下での埋没材の硬化膨張ならびに吸水膨張を測定した. 石こう系埋没材の硬化膨張の大きさは荷重に比例して減少する. 吸水膨張は硬化膨張よりも著しい荷重の影響をうける. 硬化時膨張曲線から, 我々は膨張勾配の経時変化作図し, 最大勾配におよぼす荷重の影響を検討した. その結果, 吸水膨張の最大勾配におよぼす荷重の影響は非常に著しい.
  • 渡辺 孝一, 大川 成剛, 宮川 修, 中野 周二, 塩川 延洋, 小林 正義
    1988 年7 巻3 号 p. 371-385
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
    4種の試作Ni-Cr二元合金(5%Cr, 10%Cr, 15%Cr, 20%Cr)を空気中1, 000℃で高温酸化し, 熱重量測定, X線マイクロアナライザ, およびX線回折などにより酸化現象を分析した. 5%Crと10%Crでは酸化温度が一定であるにもかかわらず, breakawayが認められ, またその酸化膜は多層構造であり, 合金と接する層にはCr2O3のPegが生成されていた. 15%Crと20%Crでは内側の酸化層は均質なCr酸化物であった. Crを薄く蒸着した純Niの酸化において, CrマーカーはNiO酸化膜の中間に存在し, 酸素の気体拡散も予想された. 結論として, 酸化物の構造(多層構造やpegの形成)を決定する重要な因子は酸素の挙動(内方への拡散など)であることが確認された.
  • 橋本 邦彦
    1988 年7 巻3 号 p. 386-405
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
    各種印象材を用いて有歯顎樹脂模型より作製された作業模型の再現性について, 三次元座標測定法を応用し, 歯列および顎堤の変位を三次元的にとらえることを試みた. とくに, 本研究では, 印象材の相違による影響を形状測定より得られた法線方向誤差から検討を行なった. その結果, アルジネート印象から得られた作業模型においては, 上下顎前歯部と下顎の臼歯部で変形が認められた. また, 縮重合型シリコーンラバー印象から得られた作業模型においては, 上顎は前歯部ではやや下方へ変位したが, 再現性が最も高かった. 下顎は, 大臼歯部における変形が大きかった. さらに, 付加重合型シリコーンラバー印象から得られた作業模型においては, 上下顎ともに, 最も大きな変形が認められた. そして, 有歯顎模型の再現性を評価する方法として, 形状測定から得られた法線方向誤差の成績が有効であった.
  • 刑部 智之, 下村 博, 東光 照夫, 久光 久, 和久本 貞雄
    1988 年7 巻3 号 p. 406-412
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
    ポーセレンリペアシステムは, 破折したポーセレンを補修するために開発された. この種のシステムは, SiO2表面を活性化するためにシラン処理剤を含んでいる. 一方, コンポジットレジンの無機フィラーは, 主にSiO2で構成されている. 本研究の目的はレジンの補修充填時に, 既存のレジンをシラン処理剤で処理することが接着強さを向上させるのに効果があるか否かを検討したものである. さらに, エナメル質にシラン処理を施し, エナメル質とレジンとの接着強さをあわせて検討した. その結果, シラン処理を施したコンポジットレジンと補修充填したレジンとの接着強さは, しないものと比較して向上した. そして, エナメル質に対するレジンの接着強さも同様に高かった. 生体外における本研究の結果は, シラン処理を既存のレジン, あるいはエナメル質に施すことにより, 臨床的にも接着強さが効果的に向上することが示唆された.
  • 木村 博, 川中 正雄, 渡辺 隆司, 高橋 純造, 安 弘, 大村 皓一
    1988 年7 巻3 号 p. 413-418
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
    CAD/CAMを歯科医療の分野に適応し, 歯科補綴物の自動設計/自動加工システムを開発することを目的としている. すなわち従来の鋳造法やモールディング法で製作されてきた歯科補綴物をCAD/CAM (コンピュータ支援による設計/加工) システムにより製作するものである. 今回はCAD, CAMいずれにも必要となる, 歯冠の3次元形状測定について, 2つの方法 (切断法, 光計測法) を検討した. 切断法は, 4倍大石こう模型の切断により断面形状のデータを得る. 光計測法は, CCD上の反射光変化から試料の3次元位置を決定している. 光計測法の有する利点としては, 自動計測による省力化や測定時間が短いことが挙げられ, 将来のシステムアップ時にも有力な形状測定法と考えられた. 一方切断法は, 測定時間が長くデータ処理がより煩雑であるため, 形状測定法としては適切ではないと思われた.
  • 柳川 敏夫, 伊藤 和雄, 和久本 貞雄
    1988 年7 巻3 号 p. 419-424
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
    本研究は象牙質窩洞における完全なる辺縁封鎖性を有する可視光線重合型コンポジットレジンシステムを開発する目的で, 新たに3種の4-META含有bonding agentを試作し, contraction gapの計測法及び, レプリカ法によるSEM観察を行ない, その評価を行なった. その結果, 0.5M濃度EDTA, 35% HEMA処理を行ない, 今回試作した4-META/MMA-TBB系で芳香族dimethacrylate及び1% PMMAを含有するbonding agentを塗布し, 100% UDMAにマイクロフィラー66%含有する可視光線重合型レジンを填塞した場合にレジンと象牙質窩壁との間に完全なる接着性が得られた.
  • 松川 泉, 新井 浩一
    1988 年7 巻3 号 p. 425-438
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
    本研究は, 3年間の水中浸漬がコンポジットレジンの材料学的性質に及ぼす影響を究明するために, 3種の臼歯部用コンポジットレジン (Bellfirm P, Clearfil Posterior, Micro Jar) と比較対照として1種の前歯部用コンポジットレジン (Clearfil FII) の材料学的性質の経時的変化について検討を行い, 次のような結果を得た.吸水量試験では, 4種のコンポジットレジンは3年間まで吸水量が増加傾向を示した. また, MFR型の臼歯部用コンポジットレジンは, 従来型フィラー含有のコンポジットレジンよりも吸水しやすく, しかも溶解しやすい傾向であった. 試験体内部のSEM観察では, 4種のコンポジットレジンは, 練和方式のコンポジットレジンのため, 気泡が多く確認され, しかも試験体表層付近は, すべて崩壊されていたが, 試験体内部中央付近までは崩壊が達していなかった. 一方, 引張強さおよび曲げ強さ試験では, 4種のコンポジットレジンは, すべて水中浸漬後3日でほぼ平衡状態になるが, この平衡状態は3ヵ月ごろまでしか続かず, 6ヵ月ないし1年後位から経時的に減少する傾向であった. しかし, 3年後の試験では, 3種の臼歯部用コンポジットレジンは前歯部用コンポジットレジンに比べて, 引張強さの点で, 同程度かもしくは若干劣っていたが, 曲げ強さの点で向上していた.
  • 片倉 直至, 川上 道夫, 林 豊, 松崎 宏明
    1988 年7 巻3 号 p. 439-443
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
    分子量の異なるポリメタクリル酸エチルを, 懸濁重合法により合成した. これらの粉末ポリマーと, ブチルフタリルグリコール酸ブチルのアルコール溶液を用い, ティッシュコンディショナーの貯蔵弾性率G′, 動的粘性η′, 損失正接tan δの周波数 (0.05〜70 Hz) および温度依存性を求めた. 各材料の種々の温度におけるG′, η′, tanδと周波数との関係に, 時間-温度換算則を適用することによって, それぞれ一本のマスターカーブが得られた. 材料の粘弾性的性質におよぼすポリマー分子量の影響が, 特に低周波数側で顕著に現われ, 分子量が小さくなると, 貯蔵弾性率は小さくなり, 損失正接は大きくなった. ティッシュコンディショナーの粉末に, ポリメタクリル酸エチルを用いる場合には, その分子量を幾分か小さく調節して, 口腔粘膜の変形の回復に応じて, 材料自体も流れをおこして変形するようにすべきである.
  • 武田 昭二, 川原 春幸, 吉岡 宣史朗, 中村 不二, 田岡 譲, 中村 正明
    1988 年7 巻3 号 p. 444-449
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
    種々な組成の金銅二元合金を試作し, 37℃, 200 rpmの動的条件下で浸漬を行った.そして, 2週間ごとに浸漬液を交換し, 最高20週間にわたり浸漬を繰り返した. このようにして得られた第1回から第10回浸漬液について, 金および銅の溶出量を測定した. 第1回浸漬液において最も大きな銅の溶出量を示し, 浸漬を繰り返すとともに減少した. 一方, 金の溶出量は各浸漬期間とも銅の溶出量に比べ小さな値であった.銅の溶出量は金含有量が66.7 wt%以上で著しく減少した. 本研究で得られた結果は多元金合金の腐食や生体適合性を考えていく上で有効な情報を提供するであろう.
  • 宮崎 隆, 玉置 幸道, 鈴木 暎, 宮治 俊幸
    1988 年7 巻3 号 p. 450-456
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
    ポーセレン(リブデント, ビタVMK), キャスタブルセラミックス(ダイコア)及びマシナブルセラミックス(マコール)を用いて光沢のある仕上げ面を得る目的で超音波ラップ研磨を行ない, 研磨能率と研磨面性状を検討した. 超音波ランプ研磨は市販の超音波研磨機(周波数28.5 KHz, 10 W)を用いて, 木材のラップ棒と試料の間にアルミナ, セラニア, ジルコニア, 酸化クロム, ダイヤモンドなどの遊離砥粒を介在させて行なった. ポーセレンはダイヤモンド以外の砥粒では能率が悪かったが, ダイヤモンドを用いるとグレーズ面のような良好な仕上げ面が得られた. マコールやダイコアはポーセレンよりも研磨性が良く, ダイヤモンドは勿論, アルミナやセラニアでも良好な仕上げ面が得られた.
  • 楽木 正実, 大土 努, 小村 隆志, 祖父江 鎮雄
    1988 年7 巻3 号 p. 457-465
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
    4CPセメントとα-TCPセメントの硬化体をDulbeccoのリン酸緩衝塩類溶液(PBS(+))中に浸漬し, その経時的変化について, X線回折, 走査型電子顕微鏡による観察およびCaとPの定量分析を行い比較検討した. 硬化直後の4CPセメントおよびα-TCPセメントは, 練和前の4CPおよびα-TCP粉末に比べて回折線が全体にブロードになっていたことから, 硬化体中にアモルファスなリン酸カルシウムが増加したことが示唆された. 4CPセメントもα-TCPセメントも硬化体をpHが中性領域のPBS(+)中に浸漬することにより, 硬化体表面に水酸化アパタイト(HAp)がC軸方向に配向しながら生成した. α-TCPセメント硬化体の表面にはHAp以外に, リン酸水素カルシウム2水和物(DCPD)の形成が認められたが, 走査型電子顕微鏡による観察ではDCPDの表面も浸漬6日後にはHApに転換したような像が認められた. セメント硬化体表面のHApへの転換は, 4CPセメントのほうがα-TCPセメントよりも速やかであるように思われた. セメント硬化体を粉砕して得た粉末のX線回折像および硬化体中のCaとPの含有量の定量分析から, セメント硬化体のHApへの転換はPBS(+)に接している硬化体の表面から生じ, 6日間の浸漬ではHApへの転換は硬化体の表層のみに限局していたことが明らかとなった. しかしPBS(+)中の総Ca量と総P量の変化を調べた結果, 4CPセメントでもα-TCPセメントでも硬化体のHApへの転換が浸漬6日後にもなお進行中であったことが推察された.
  • 二階堂 徹, 永田 勝久, 中林 宣男
    1988 年7 巻3 号 p. 466-470
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
    著者らは, 新しい歯科用接着材料を開発する目的で光重合型ボンディングライナーに関する研究を行ってきた. 今回は, 触媒の検討を行うため, N, N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)の代わりとして, N-フェニルグリシン(NPG)を還元剤としたライナーを試作した. 接着促進モノマーとして, 4-メタクリロキシエチルトリメリット酸(4-MET), 2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルメタクリレート(HPPM), 2-メタクリロキシエチルp-メトキシフェニルリン酸(CH3O〜OH), 前処理剤としてpH 7.4に調製した0.5 M EDTA・2Na(EDTA5-0), あるいは0.3 M EDTA・2Na-0.2 M EDTA・Fe・Na(EDTA3-2)を用いた. その結果, EDTA3-2処理した牛歯象牙質に対し, CQ・NPG・4-METで8.4 MPa, CQ・NPG・CH3O〜OHで8.6 MPaの接着強さが得られた. しかしHPPMでは, 接着強さの向上は認められなかった. NPGは光重合触媒系で還元剤として作用し, さらにCQ, NPGと酸性モノマーである4-MET, CH3O〜OHを組み合わせることによって, ライナーの重合性の向上が認められた.
  • 木下 亨, 永田 勝久, 中林 宣男
    1988 年7 巻3 号 p. 471-477
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
    HPPMとDEGDMAあるいはTEGDMAを混合したモノマーを液成分に, TMPTフィラーを粉成分に用いた接着性レジンセメントを試作し, そのモノマー組成(重量比)変えて機械的性質と牛歯への接着性を検討した. 粉液比は重量比で1 : 1とし, HPPM-TEGDMAを4 : 6の組成で混合したモノマーを用いると良好な機械的性質が得られた. 硬化時間は5分, 圧縮強さは2, 000 kgf/cm2, 圧縮引張強さは360 kgf/cm2となった. またモノマー溶出量も最も小さくなり, 65%りん酸水溶液で処理した牛歯エナメル質に対する引張接着力は42 kgf/cm2であった. しかし被膜厚さは51.7 μmと厚く, 牛歯象牙質に対する引張接着強さも低いため改良の必要があった.
  • 前田 眞琴, 茂木 正邦, 三浦 不二夫, 中林 宣男
    1988 年7 巻3 号 p. 478-487
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
    4-メタクリロキシエチルトリメリット酸(4-MET)を含むMMA系レジンの接着機構を検討するため, 2つの実験を行なった. (1)ヒト小臼歯を用い, 接着したレジンを熱アセトンで溶解し, ⓐエナメル質側接着界面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察するとともに, ⓑ同表面に対し人工う蝕法を応用して耐酸性試験を行なった. 4-MET/MMA-TBBレジンあるいは4-MET/MMA-BPO・アミンレジンを溶解除去したエナメル質側接着界面には, アセトンにも酸にも難溶性の層が存在しており, 7日間の人工う蝕生成法によっても, う蝕様病巣は生成されなかった. 2-ヒドロキシ-3-β-ナフトキシプロピルメタクリレート(HNPM), メタクリル酸(MA)を添加したMMA-TBB系レジンの場合には, う蝕様病巣の生成は対照側に比べ30%ほど抑制されるが, 接着界面の難溶性の層は確認されなかった. (2)レジンとハイドロキシアパタイト(HAP)との混合物の赤外線吸収スペクトルを分析したところ, 4-METあるいはMAを含むMMA系レジンにおいては, 1, 560 cm-1付近にカルボキシレートの存在を示す吸収帯が生じることが分かり, Ca++との反応が強く示唆された. 4-METを含むMMA系レジンの接着界面において確認された酸にもアセトンにも難溶性の層は, 同レジンのエナメル質への優れた浸透性と反応性によって生じたと考えられ, 高い接着性に寄与しているものと考えられた.
  • 北野 忠則
    1988 年7 巻3 号 p. 488-502
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, ベース材および支台築造材に対する接着性セメントの接着強さを検討するために, 片面接着強さと突合せ接着強さの違いや, 鋳造用合金に表面処理を行うと接着強さにどのような影響があるかを比較検討したものである. 片面接着法は9種のベース材および支台築造材を被着体とし, 3種の接着性セメントを用い, 突合せ接着法は3種の被着体, 2種の鋳造用合金および2種のレジンセメントを用いた. その結果, 次の結論がえられた. 2種の接着性レジンセメントはレジン系の支台築造材に対し良好な接着強さを示し, 全般的には4META-MMA/TBB系レジンセメントのほうがBisGMA/リン酸エステル系レジンセメントより大きな値を示した. また, この種の実験を行うにあたっては, より臨床に近い突合せ接着試験法を採用し, 片面接着試験法は参考程度にとどめておいたほうがよい. さらに, この種の試験に供する鋳造用合金は, いわゆる鋳放しの状態で用いるべきであることが示唆された.
  • 宮治 俊幸
    原稿種別: 本文
    1988 年7 巻3 号 p. 505-506
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2018/04/28
    ジャーナル フリー
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