抄録
チタンは生体親和性にすぐれ, 金属としては比較的熱の不良導体であり, 耐蝕性にもすぐれた金属である. 本研究ではこのチタンを用いて, 各種合着用セメントに対する接着強さを求め一般に臨床で使用されている金合金(Type IV), 12%金含有銀・パラジウム合金およびニッケル・クロム合金の接着強さと比較検討を行ない, 今回の実験では次のような結果が得られた. 1. 引張接着試験法を用いた本実験において, リン酸亜鉛セメントを用いた場合チタンを含めた各合金に対してほとんど接着しなかった. 2. チタンに対してカルボキシレートセメントを用いた場合, 96kg/cm2の接着強さが得られ, 金合金の約2倍の大きさを示した. 3. グラスアイオノマーセメントに対して, チタンは32kg/cm2と貴金属系合金の約2倍の接着強さを示した. 4. 接着性レジンセメントを用いた場合のチタンに対する接着強さは220kg/cm2であり, これは貴金属系合金の約3倍の大きさであった.