歯科材料・器械
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原著
コンポジットレジンを研削歯質に接着させる新しい歯質反応性ポリマー
木下 亨
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1990 年 9 巻 1 号 p. 86-101

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抄録
メタクリル酸メチル-p-スチレンスルホン酸共重合体(MS)を合成し, 研削歯質への接着について検討してきた. スメアー層からのCa2+と反応し, 不溶化して歯質に接着するというMSの接着機構は, モノマーの浸透, 重合による接着機構とは全く異なっている. MS水溶液で処理した歯質にMMA-TBBレジンは11〜12MPaの接着強さを示すものの, 即重レジンでは2.5MPaと低い. これは歯質に沈着したMS層内に存在する遊離スルホン酸が, 即重レジンの重合を阻害しているためであると考えた. トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)-d, l-カンファーキノン(CQ)-N-フェニルグリシン(NPG)を用いた光重合型ライナーは酸性状態でも確実に重合できるため, これを用いると歯質に沈着したMSへの接着が可能となった. すなわち, MAA70mol%, p-スチレンスルホン酸30mol%の組成のMS7の10wt%水溶液に, 塩化第二鉄を[Fe3+]/[SO3-]=0.28となるように調製した水溶液で処理した歯質にTEGDMA-CQ・NPGは10〜11MPaと良好な接着性を示した. さらにMS処理した象牙質にTEGDMA-CQ・NPGを接着させた試料の, 引張試験後の破壊面の観察と接着界面のSEM観察から, MS処理をすると象牙質へのモノマーの浸透がないことが確認され, MSの歯質への接着には, MSとCa2+の反応が大切であることがわかった. 以上の結果から, MSは歯髄保護と歯質接着性の2つの機能を持った反応性高分子電解質であると結論した.
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© 1990 一般社団法人 日本歯科理工学会
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