市販の4種の光重合コンポジットレジンの耐久性を熱サイクル試験により検討した.GRはアクリルエステルをグラフト重合処理した無機質フィラーを, LFはシラン処理した無機質フィラーを, PCはシラン処理無機質フィラーと有機質複合フィラーを含有しており, SIはMFR型のコンポジットで有機質複合フィラーを含有している.これらの材料に, 熱サイクルを10, 000, 30, 000, 50, 000回負荷した後, それらの機械的性質の測定および表面のSEM観察により材料の劣化を評価した.圧縮強さおよび曲げ弾性係数は, 試験したすべての材料で, 熱サイクルにより顕著な変化は認められなかった.しかし, 曲げ強さ, 耐歯ブラシ摩耗性および表面硬さは30, 000回までは熱サイクル数の増加とともに低下する傾向を示し, 30, 000回以降はほとんど変化しなかった.熱サイクルを負荷しなかった試料に対する50, 000回負荷した試料の曲げ強さの比率は, それぞれGRで75%, LFで60%, PCで50%およびSIで65%であった.材料の劣化は, 試料表面のフィラー/マトリックス界面に発生したクラックとして観察された.有機質複合フィラーを含有するSIとPCでは, 比較的早期にクラックが発生し, シラン処理した無機質フィラーを含有するLFでは, クラックの発生時期も遅く, その数もSIやPCに比較して少なかった.一方, GRでは, 50, 000回負荷後もクラックは観察されなかった.以上の結果から, フィラー表面のグラフト重合処理はコンポジットレジンの耐久性向上に有効であると推察された.
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