歯科材料・器械
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9 巻, 1 号
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原著
  • 樋口 慎一
    1990 年9 巻1 号 p. 1-10
    発行日: 1990/01/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    これまで, 義歯床用PMMAレジンの補強にPoly-p-phenylene terephthalamide(PPTA)という剛直高分子鎖を複合させる分子複合PMMAレジンを考えた.先ず, DMSO+NaH系でN位にアルキル置換を行い改質PPTAを作成した.例えば, オクチル(Oct)およびステアリル(Ste)基で置換されたPPTA(Oct-PPTAおよびSte-PPTA)をPMMA中に分子分散(複合量3wt%)させたレジン(Oct-PPTA-PMMAおよびSte-PPTA-PMMA)の歯科理工学的性質は, Oct-PPTA-PMMA>Ste-PPTA-PMMA≧PMMAという順になった.この性質を分子論的に解明するためにNMRおよびTG解析, および動的粘弾性を測定して検討した.NMRではT1測定(反転回復法を用いた)を行ったところ, Oct-PPTAの側鎖末端メチル基は主鎖の剛直性に束縛されるが, Ste-PPTAの場合, 束縛を受けにくいことが解った.TG測定より重量減少開始温度は, Oct-PPTA-PMMA>Ste-PPTA-PMMA>PMMAの順であった.動的粘弾性測定において, ゴム状領域から流動状領域における貯蔵弾性率(G')はOct-PPTA-PMMA>Ste-PPTA-PMMA>PMMAという順となり, 以上の結果から歯科理工学的性質との相関性について論じた.
  • 栗崎 吉博, 長山 克也
    1990 年9 巻1 号 p. 11-29
    発行日: 1990/01/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, Pd合金成分元素と陶材との結合を究明することである.そこで, 本研究においては三種のPd合金を使用し, その高温酸化挙動や酸化層の構造, 合金と陶材との接着界面の様相をESCA, EPMAを使用して分析を行った.ESCA分析の結果, ディギャシングおよびas cast後の加熱処理で合金表面にはPdO, SnO2, In2O3, CuOまたはCu2O, Sb2O3またはSb2O5などの酸化物が認められた.また, 合金表面に集積する成分元素の相対量をEPMAにより加速電圧を変えて(加速電圧10kVと20kV)分析した結果, 添加元素の表面集積量は加速電圧10kVで分析した場合の方が大きく, これに対して, 主要元素(Pd)の表面集積量は加速電圧20kVで分析した場合の方が大きかった.接着界面のEPMA分析の結果, 添加元素が合金マトリックス内で酸化され, 内部酸化層を形成している様相が確認された.また, 酸化層の構造や形態は, ディギャシング操作の有無により明らかな相違が認められた.接着界面に対し約5°43'の角度を付与して研磨を行い, 界面部を拡大して分析を行ったが, この方法は酸化層の構造や形態を観察するには有効であり, 同部の詳細な分析, 観察を行うことが可能であった.本研究の結果, Pd合金においては添加元素だけではなく, 主要元素も陶材との結合に関与していることが明らかとなり, また合金の操作条件に関してはディギャシング操作は陶材との結合にとって重要な操作条件であることが示唆された.
  • 宮川 修, 渡辺 孝一, 大川 成剛, 中野 周二, 塩川 延洋, 小林 正義, 田村 久司
    1990 年9 巻1 号 p. 30-41
    発行日: 1990/01/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    チタン鋳造体に対する炭化珪素砥粒の市販および試作ホィールの研削性能を検討した.GC砥粒のビトリファイドホィールの場合, ホィールの周速度が高いほど, また研削荷重が大きいほど切れ味は良くなるが, 同時にホィールは激しく損耗する.100gf以上の荷重に対して, 研削比はホィールの周速度によらず1に近い値を示した.C砥粒のマグネシアオキシクロライドホィールもこれと同様の傾向である.前に報告したNi-Cr合金以上に, 被削材に送りを与えながら研削することが大切である.ホィールを被削材に押しつけるだけと, 砥粒は化学摩耗し, チタン酸化物の生成による研削焼けのために研削面は着色する.送り研削でも砥粒切れ刃の切りくず生成過程は理想からほど遠く, 研削面は砥粒との反応で汚染される.周速度が高いほど, 多くの切りくずがホィールに粘着して砥粒間隙に堆積し, それが研削面と高速で強く擦れあうために, ホィールを激しく損耗させる.ホィールの損耗により, 切りくずの目づまりと脱落とが繰り返される.
  • 宮川 修, 渡辺 孝一, 大川 成剛, 中野 周二, 塩川 延洋, 小林 正義, 田村 久司
    1990 年9 巻1 号 p. 42-52
    発行日: 1990/01/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    チタン鋳造体に対する各種アルミナ砥粒の市販ヒドリファイドホィールの研削性能を検討した.切れ味からみると, アルミナ系ホィールの適正な周速度は700m/minの近傍にある.これより低い周速度では主として目づまりのために, 高い周速度ではチタンとの反応による砥粒の化学摩耗のために, それぞれ能率研削ができない.同じA砥粒でも結合度が大きいホィールがチタンの研削に適し, A砥粒よりもWA砥粒のホィールがさらに適している.しかし, アルミナ系ホィールの切れ味は前報で調べた炭化珪素系ホィールのそれに比べて一般に劣る.ホィールを被削材に押しつけるだけの研削ではほとんど削れず, 被削材の送りが炭化珪素系ホィールの場合以上に大切である.ホィールを被削材に押しつけるだけの場合はもちろん, 送り研削でも周速度が高い場合は, 砥粒が化学摩耗するとともに, チタンの研削面は研削焼けをおこして着色した.研削焼け層の主体はチタン酸化物で, その厚さは数μmに達する.
  • 平林 茂, 野本 理恵, 原嶋 郁郎, 平澤 忠
    1990 年9 巻1 号 p. 53-64
    発行日: 1990/01/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    市販の4種の光重合コンポジットレジンの耐久性を熱サイクル試験により検討した.GRはアクリルエステルをグラフト重合処理した無機質フィラーを, LFはシラン処理した無機質フィラーを, PCはシラン処理無機質フィラーと有機質複合フィラーを含有しており, SIはMFR型のコンポジットで有機質複合フィラーを含有している.これらの材料に, 熱サイクルを10, 000, 30, 000, 50, 000回負荷した後, それらの機械的性質の測定および表面のSEM観察により材料の劣化を評価した.圧縮強さおよび曲げ弾性係数は, 試験したすべての材料で, 熱サイクルにより顕著な変化は認められなかった.しかし, 曲げ強さ, 耐歯ブラシ摩耗性および表面硬さは30, 000回までは熱サイクル数の増加とともに低下する傾向を示し, 30, 000回以降はほとんど変化しなかった.熱サイクルを負荷しなかった試料に対する50, 000回負荷した試料の曲げ強さの比率は, それぞれGRで75%, LFで60%, PCで50%およびSIで65%であった.材料の劣化は, 試料表面のフィラー/マトリックス界面に発生したクラックとして観察された.有機質複合フィラーを含有するSIとPCでは, 比較的早期にクラックが発生し, シラン処理した無機質フィラーを含有するLFでは, クラックの発生時期も遅く, その数もSIやPCに比較して少なかった.一方, GRでは, 50, 000回負荷後もクラックは観察されなかった.以上の結果から, フィラー表面のグラフト重合処理はコンポジットレジンの耐久性向上に有効であると推察された.
  • 高橋 貢, 鈴木 一臣, 中井 宏之
    1990 年9 巻1 号 p. 65-73
    発行日: 1990/01/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    歯質と修復用レジンの接着強化を目的として様々な材料および技法の研究・開発が行われている.しかし, 臨床的に満足な結果が得られていないのが現状である.そこで, 著者らはアミノ酸誘導体とHEMAの水溶液を歯質被着面処理材として用いることにより歯質とボンディング材との接着強化を図った.N-methacryloyl alanine(MAL)あるいはN-acryloyl alanine(AAL)とHEMAの適当な組成比の水溶液で処理した牛歯エナメル質および象牙質に市販ボンディング材およびコンポジットレジンを接着させたところ, MALではエナメル質に103kgf/cm2, 象牙質に80kgf/cm2, AALではエナメル質に99kgf/cm2, 象牙質に58kgf/cm2の最大の引っ張り接着強さを発現した.これはアミノ酸誘導体の歯質脱灰の効果だけでなくアミノ酸誘導体と歯質のハイドロキシアパタイトとの反応物の存在およびHEMAのコラーゲンなどの有機成分への作用によるものと考えている.
  • 木村 博, 寺岡 文雄, 杉田 順弘
    1990 年9 巻1 号 p. 74-78
    発行日: 1990/01/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    もち状レジンの注入機と注入用FRPフラスコを開発して, 注入時の石こう内の流れや圧力を測定し, 作製した義歯の適合性について検討した.バリ取りに平均5分間かかると仮定すると, てん入法ではもち状レジン中のモノマは約10mg/cm2揮発することがわかった.もち状レジンを55kgf/cm2以上の圧力で注入すると, もち状レジンは石こう型内に完全に充てんされた.注入後2分以内に注入口をボルト締めすると圧力は約30kgf/cm2まで上昇した.注入法によるマイクロ波加熱では, 石こう型内の圧力は20kgf/cm2以上に保持された状態で重合されることがわかった.注入法とマイクロ波重合法を組み合わせて作製した義歯の適合性は, マイクロ波重合による片面加熱の場合より2から3倍程度優れていた.
  • 日比野 靖, 黒岩 弘宏, 黒沢 茂務, 菅家 豪, 橋本 弘一
    1990 年9 巻1 号 p. 79-85
    発行日: 1990/01/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    チタンは生体親和性にすぐれ, 金属としては比較的熱の不良導体であり, 耐蝕性にもすぐれた金属である. 本研究ではこのチタンを用いて, 各種合着用セメントに対する接着強さを求め一般に臨床で使用されている金合金(Type IV), 12%金含有銀・パラジウム合金およびニッケル・クロム合金の接着強さと比較検討を行ない, 今回の実験では次のような結果が得られた. 1. 引張接着試験法を用いた本実験において, リン酸亜鉛セメントを用いた場合チタンを含めた各合金に対してほとんど接着しなかった. 2. チタンに対してカルボキシレートセメントを用いた場合, 96kg/cm2の接着強さが得られ, 金合金の約2倍の大きさを示した. 3. グラスアイオノマーセメントに対して, チタンは32kg/cm2と貴金属系合金の約2倍の接着強さを示した. 4. 接着性レジンセメントを用いた場合のチタンに対する接着強さは220kg/cm2であり, これは貴金属系合金の約3倍の大きさであった.
  • 木下 亨
    1990 年9 巻1 号 p. 86-101
    発行日: 1990/01/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    メタクリル酸メチル-p-スチレンスルホン酸共重合体(MS)を合成し, 研削歯質への接着について検討してきた. スメアー層からのCa2+と反応し, 不溶化して歯質に接着するというMSの接着機構は, モノマーの浸透, 重合による接着機構とは全く異なっている. MS水溶液で処理した歯質にMMA-TBBレジンは11〜12MPaの接着強さを示すものの, 即重レジンでは2.5MPaと低い. これは歯質に沈着したMS層内に存在する遊離スルホン酸が, 即重レジンの重合を阻害しているためであると考えた. トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)-d, l-カンファーキノン(CQ)-N-フェニルグリシン(NPG)を用いた光重合型ライナーは酸性状態でも確実に重合できるため, これを用いると歯質に沈着したMSへの接着が可能となった. すなわち, MAA70mol%, p-スチレンスルホン酸30mol%の組成のMS7の10wt%水溶液に, 塩化第二鉄を[Fe3+]/[SO3-]=0.28となるように調製した水溶液で処理した歯質にTEGDMA-CQ・NPGは10〜11MPaと良好な接着性を示した. さらにMS処理した象牙質にTEGDMA-CQ・NPGを接着させた試料の, 引張試験後の破壊面の観察と接着界面のSEM観察から, MS処理をすると象牙質へのモノマーの浸透がないことが確認され, MSの歯質への接着には, MSとCa2+の反応が大切であることがわかった. 以上の結果から, MSは歯髄保護と歯質接着性の2つの機能を持った反応性高分子電解質であると結論した.
  • 小松 光一, 根本 君也, 堀江 港三
    1990 年9 巻1 号 p. 102-111
    発行日: 1990/01/25
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー
    光重合型コンポジットレジンの光透過性に影響する因子を検討するために, 試作光透過量測定器を試作し, 有機複合フィラーを使用した6種の試作光重合型コンポジットレジンおよび14種の市販光重合型コンポジットレジンの透過率の経時的変化を測定した.試作光重合型コンポジットレジンの透過率は, 25〜73%と大きな値を示した.また, 透過率の経時的変化は, 透過率の増加するグループ, 最大値を示すグループ, 減少するグループに分類することができた.これは, マトリックスレジンとフィラーの屈折率の差が少なくなると, 透過率が増加する為だと考えられる.しかし, 重合中の透過率が最大値を示すマトリックスレジンの屈折率は, マトリックスレジンとフィラーの屈折率が一致したときでないことがわかった.市販光重合型コンポジットレジンを透過する光は, 照射光の半分以下に低下した.また, 透過率の経時的変化は, 3種のグループに分類でき, 今回測定した試料のほとんどが, 重合によって透過率が増加した.
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