発達心理学研究
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個別性のある材質名称の獲得の程度と「存在論的カテゴリー」の影響 : 4歳児と6歳児の比較
小林 春美
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1999 年 10 巻 1 号 p. 23-31

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抄録
「牛乳」「砂」のような個別性のない材質 (non-solid substances) の名称に比ベ, 「鉄」「プラスチック」のような個別性のある材質 (solid-substances) の名称の獲得は難しく遅いことが指摘されている。本研究は, 4歳児と6歳児を対象にしさまざまの事物を見せ, 「これは何でできていると思いますか」と尋ねることにより, 個別性のある材質名称の知識を調べた。事物はその材質名称を尋ねられたとき, 85%以上の大人の被験者が一致して1つの名称を産出するものが選ばれた。実験の結果, 4歳児では正しい材質名を産出するのはまだ難しく, 緒についたばかりであることが分かった。個別性のない材質名称に比ベ, 個別性のある材質名称の獲得は確かに遅いと言える。一方6歳児では, 多くの材質について材質名をかなりよく正答できるようになっていた。4歳児では正答の割合は低いとは言え, 全回答数中4割は, 正答および, 正答ではなくとも材質自体には注目できていることを示す回答であった。このことから, この年齢では「存在論的カテゴリー」により個別性のある材質名称の獲得がすべて阻害されているわけではないと言える。
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© 1999 一般社団法人 日本発達心理学会
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