発達心理学研究
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幼児を対象とした手の運動操作課題における復帰抑制
土田 宣明
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2002 年 13 巻 3 号 p. 244-251

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抄録
本研究では,反応抑制の基本的機能が形成される幼児を対象にして,幼児でも楽しめる実験課題を用い,復帰抑制の現象を検討した。ここでいう復帰抑制とは場所弁別課題において,先行して刺激が提示された側に続いて刺激が提示されたとき,反応潜時が長くなる現象を指す。次の2点を中心に検討を加えた。1.意図的な手の運動操作課題で,幼児期においても復帰抑制の現象が確認できるのか否か。2.復帰抑制が機能しているとしたならば,そこにどのような発達的変化がみられるのか。対象は保育園の4歳児20名と5歳児24名の計44名である。実験方法として,パソコンのディスプレイに提示される刺激に対応して,左右のスイッチを押し分ける課題を用い,刺激の提示から反応までの反応潜時を計測した。実験の結果,主として,1.意図的な手の運動操作課題で,4歳児の段階から復帰抑制の現象が確認できたこと。2.その復帰抑制の現象は反応の困難度の影響をうけ,反応の困難度が増加するほど強く機能することの2点が確認された。今回の結果は,行動調節機能の形成過程のかなり初期から,復帰抑制の現象が機能していること示唆していること,さらに,自己調節系としての人間の発達にとって,潜在的なプロセスの重要性を示唆しているものと思われた。
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© 2002 一般社団法人 日本発達心理学会
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