発達心理学研究
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日本人留学生の異文化適応の様相 : 滞在国の対人スキル,民族意識,セルフコントロールに着目して
植松 晃子
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2004 年 15 巻 3 号 p. 313-323

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抄録
本研究では,日本人留学生の異文化適応の様相を明らかにすることを目的とし,1)滞在国の対人スキル獲得,2)民族的側面(民族同一性・他民族志向),3)セルフコントロール(調整型・改良型セルフコントロール)といった要因と,異文化での充実感・満足感を示す異文化適応感との関連を中心に検討した。アメリカに滞在する143名の日本人留学生を対象に質問紙調査を実施した。異文化適応感について4因子抽出された(「滞在国の言語・文化」,「心身の健康」,「学生生活」,「ホスト親和」)。また因果モデルに基づくパス解析の結果,民族同一性と他民族志向からは,滞在国の対人スキル獲得と異文化適応感因子に有意なパスが見られ,民族意識の持ち方によって異なる適応のタイプが示唆された。さらに調整型セルフコントロールからも滞在国の対人スキル獲得や異文化適応感因子への有意なパスが見られ,情動制御や気のそらしといったコントロールが特に有効であることが明らかになった。また滞在国の対人スキル獲得は全ての異文化適応感因子に関与しており,異文化適応において非常に重要な要因であることが明らかになった。
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© 2004 一般社団法人 日本発達心理学会
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