発達心理学研究
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幼児によるポジティブ,ネガティブな出来事の語り : 親が出来事を選定した場合と子どもが出来事を選定した場合
尾山 智子仲 真紀子
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2013 年 24 巻 1 号 p. 1-12

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抄録

本研究では,幼児が感情を伴う出来事をどのように自律的に語るようになるのかを検討するため,5-6歳の幼児50名(年中児28名,年長児22名)とその保護者を対象とした調査を行った。保護者には,幼児にとってのポジティブな出来事とネガティブな出来事をそれぞれ2つずつと,日常的ルーチンを1つ挙げてもらい,その内容について調査票に回答してもらった。次に,幼児と約20分の個別面接を行った。面接では,幼児に,親が挙げた日常的なルーチンを1つ,親が挙げたポジティブな出来事とネガティブな出来事,幼児に挙げてもらったポジティブな出来事とネガティブな出来事を1つずつ,計5つについて自由報告するよう求めた。親が選定した出来事やポジティブな出来事は特別で特徴的なエピソードを含むものが多く,一方,幼児が選定した出来事やネガティブな出来事には日常的なエピソードが多かった。報告には年齢差,課題差があり,年長児は年中児よりも出来事についてより多くの情報を報告した。また,幼児はポジティブな出来事や親が選定した出来事について多く語り,特にポジティブな出来事については,時間,場所,人物,活動の報告が多かった。感情語の使用については,ネガティブな感情語よりもポジティブな感情語を用いて出来事を語ることが多く,事物にコメントするために感情語が多く用いられた。

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© 2013 一般社団法人 日本発達心理学会
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