発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
原著
非合理的事象は幼児の誤信念理解を促進するか
自己の驚きを手がかりとした心的状態の推論
佐藤 賢輔実藤 和佳子
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2013 年 24 巻 3 号 p. 348-357

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抄録

本研究では,明示的な言語応答を求める誤信念課題において,驚きを喚起する事象の導入が,誤信念に基づく推論を容易にするかどうかを検討した。3歳4ヶ月から5歳3ヶ月の幼児69名を対象に,非合理的事象(物体消失・出現マジック)によって対象児の驚きを喚起する手続きを含んだ課題と,驚き喚起手続きを含まない2つの課題,計3種類の誤信念課題を実施した。その結果,他者の誤信念について尋ねる質問においても,自己の過去の誤信念について尋ねる質問においても,非合理的事象を含む課題の正答率は他の2つの課題の正答率よりも高かった。また,驚き喚起手続きを含む課題の正答率はチャンスレベルを有意に超えなかったものの,回答のパターンはある程度一貫しており,特に4歳児クラス(4歳4ヶ月~5歳3ヶ月)においては,個人内の回答の一貫性は他の誤信念課題と同程度に高かった。これらの結果から,非合理的事象によって喚起された驚きが,幼児が他者や過去の自己の心的状態を推論する過程において有効な手がかりとして機能していることが示された。さらに,幼児の持つ強力なあと知恵バイアスが信念の推測過程に干渉的に作用していることが標準的な誤信念課題における失敗の一因となっていること,また,他者の信念を表象するメカニズムが標準的な誤信念課題に通過する以前から機能していることも示唆された。

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© 2013 一般社団法人 日本発達心理学会
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