発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
原著(公募)
青年先天性心疾患患者の心理的自立の発達
久保 瑶子
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2017 年 28 巻 4 号 p. 221-232

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抄録

医療の進歩に伴い,先天性心疾患(以下,CHD)のある多くの患者が成人期を迎えることが可能になった。そのため,現在では青年CHD患者の「自立」の発達やその支援に関心が集まっている。本研究では,患者の「心理的自立」の発達的特徴を明らかにするために,中学生から社会人(29歳まで)のCHD患者92名と健常者273名に質問紙調査を行い,比較した。その結果,青年前期では両群で自立意識に有意な差はなく,女性よりも男性の自立意識が高いという共通の性差が見られた。一方,青年後期では,健常男性は男性患者よりも自立意識が高く,また男性の方が自立意識が高いという性差は,統制群では見られたが患者群では見られなかった。また,疾患の重さは自立意識に影響していなかったが,疾患をどのように捉えているのかが自立意識に影響していた。医療者や親,心理士等は,患者にとっては疾患を持っている状態が「普通」であることを念頭に置き,一人一人の発達のプロセスを尊重した自立支援を行っていくことが大切である。

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© 2017 一般社団法人 日本発達心理学会
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