2018 年 29 巻 4 号 p. 199-207
本稿では日本の発達心理学研究を世界へ発信する意義について考え,そのための具体案を提示する。具体的には,これまでの「発達心理学研究」誌を中心に日本の発達心理学者による研究の特徴とその独自性について整理する。まず第一に,方法論的な面での日本の発達心理学研究の独自の強い点を概観する。量的・質的両アプローチの発展や,縦断研究の割合,さらに個人差をどう扱うかに関する議論などが挙げられる。第二に,研究テーマの独自性についていくつかの例を取り上げ紹介する。発達研究で取り上げられる日本という土壌での活動や行動指標のユニークさを挙げる。第三に,比較文化心理学的視点から日本の発達研究の独自性と有益性を整理し,時代・歴史的変遷も含め議論する。これらの背後には,日本の発達研究者の認識論がかかわっていることが示唆される。最後に,日本の発達研究の世界への発信を容易にするための具体的提案をまとめる。