発達心理学研究
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チンパンジー乳児における愛着の研究 : Strange Situationにおける行動と心拍変化
井上 徳子日上 耕司松沢 哲郎
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1992 年 3 巻 1 号 p. 17-24

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抄録
チンパンジー乳児の愛着をStrange Situation法によって調べた。ビデオ録画による行動観察に加えて, チンパンジーの情動的反応を数量化するために心拍テレメトリーを使用した。被験体は生後2カ月目より人工哺育で育てられたメスのチンパンジー1頭であった。母親役は被験体と毎日1〜2時間の接触のあった男性 (ヒト) であった。またストレンジャー役は, 被験体にとってまったく未知の人物 (女性4名と男性3名) がおこなった。Strange Situation法は1週間間隔で7試行おこなわれた。母子分離前においては身体的移動, 対象操作などの探索行動が, 母子分離場面においては, 発声やロッキングなどの母親との接触を要求する愛着行動が, また母親との再会場面では母親との接触を維持する愛着行動が多くみられた。被験体は母親を安全基地として探索行動を続けることができた。また瞬時心拍数については, 母子が分離される際には急激に増加, 母親のいる場面では比較的低く安定するなど, 各エピソードとの間に明瞭な対応関係が見られた。これらの結果よりStrange Situationにおけるチンパンジー乳児の愛着はヒト乳児のそれと極めて類似していることが明らかにされた。
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© 1992 一般社団法人 日本発達心理学会
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