本研究の目的は,成人注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder ; ADHD)患者に対する時間管理スキル習得のための集団認知行動療法の予備的効果検討を行うことである。対象は,20歳以上65歳未満のADHD患者8名(平均年齢:39.80歳,女性:男性=7:1)であった。介入プログラムは,ADHD患者の時間管理で困難を抱える6つの生活場面から構成されており,1回90分間計8回行った。参加者とその家族に対して,プログラム開始前(T1),終了後(T2),終了2ヶ月後(T3)の3時点で,質問紙への回答を求めた。本人評価では,CAARSの不注意/記憶症状,衝動性/情緒不安定,DSM-IV不注意症状,DSM-IV総合ADHD症状において,T1からT2時点およびT3時点で有意な改善が見られ,T3時点には臨床域以下に達していた。家族評価では,不注意/記憶症状においてのみ,T1-T3間で有意な差が見られた。介入プログラムの自覚的・他覚的な効果が示され,治療効果を認識する時期および症状について本人と家族間に差異のあることが示唆された。