2019 年 30 巻 2 号 p. 61-73
本研究では,9歳から11歳の知的障害のない自閉スペクトラム症の児童6名,支援者6名,参与観察者3名による療育活動の参与観察分析を通して,児童の社会性の発達と,それに伴う支援者の係わりを明らかにした。児童と支援者の相互作用を量的・質的に分析した結果,どの児童に対しても支援者は,活動前半には,共感的に児童の言動に耳を傾けたり,逆に自分の意見を伝えたりしながら関係作りを行い,さらに,児童同士が係われるよう仲介していた。そして活動後半には,誤りを指摘したり,児童の思いを明確化するなどして各児童の発達課題にアプローチし,さらに,児童ら自身で協働活動が行えるよう支援していた。
一方,児童の社会性については,全児童において,活動終盤には自他境界を意識した言動もしくは他児との協働活動の増加が見られ,社会性に係わる言動の増加が見られた。但し,そのプロセスについては,「自己中心から他者理解へ」「集団の辺縁から集団の中心へ」「孤立から他者との関係性の芽生えへ」の3つに類型化され,個別性が見られた。今後は,このような社会性の発達と密接に係わる自他理解の発達過程が,自閉スペクトラム症の子どもと定型発達の子どもとの間でどのように異なるのかを明らかにすることが課題である。