発達心理学研究
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展望(依頼)
乳幼児期における社会的認知能力の発達軌跡
中村 知靖実藤 和佳子大神 英裕
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2022 年 33 巻 4 号 p. 304-313

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抄録

発達研究において縦断研究の重要性が指摘されている。しかしながら,日本においては,縦断研究実施の困難さのため,発達研究の主流とはなっていない。筆者らは,地域と連携しプロジェクトを立ち上げ,乳幼児期における社会的認知の発達に関する縦断研究を行ってきた。本論文では,まず,プロジェクトで実施した生後8ヶ月から18ヶ月までの縦断調査から,社会的認知の初期発達において重要な現象である共同注意の定型発達の段階,ならびに定型発達と自閉症スペクトラム障害における共同注意の発達差について論じる。次に,共同注意と自閉症スペクトラム障害との関連性をもとに開発された自閉症スペクトラム障害スクリーニングテストについて紹介し,早期発見のツールとしての可能性や課題について論じる。さらに,早期発見に基づいた早期支援の実践例としてプロジェクトでの取り組みについて紹介する。最後に,本プロジェクトによって得られた知見をもとに,縦断研究の意義や問題点について議論する。

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© 2022 一般社団法人 日本発達心理学会
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