発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
原著
授業実践型相互教授介入における達成目標の効果:小学6年生の算数グループ学習過程の検討
町 岳橘 春菜中谷 素之
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2022 年 33 巻 4 号 p. 407-418

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抄録

本研究では,小学6年生の算数グループ学習を対象に,授業実践型相互教授(町・中谷,2014)における達成目標操作介入が児童の学習過程に及ぼす影響について,質的・量的データを扱うミックス法によって検討を行った。「拡大図と縮図」の単元で,理解や習熟を志向する熟達目標と,正解や他者からの高い評価を志向する遂行目標をもつことを促した2群への学習効果を比較した。課題達成への影響(分析1)では,「正誤判定課題」の学業達成度では両群に差はみられず,「解法説明課題」では,熟達目標群が遂行目標群よりも高い成績であった。質問紙調査(分析2)では,熟達目標群の児童の方が,他者へ思考促進的に関与しようとし,遂行目標群の児童の方が,より結果を重視して学習に取り組んでいるという結果が示された。発話カテゴリ分析(分析3)の結果,グループの考えをまとめる後半の話し合いで,熟達目標群の「答えを求める過程」を重視する発話が多かったのは,熟達目標群で友達の「説明・助言」を,遂行目標群で友達の「回答・速度」を促す発話が多かったことと関係している可能性が示唆された。発話の事例解釈的分析(分析4)では,両群の特徴的な相互作用の生成過程が確認され,授業実践型相互教授に,熟達目標操作という動機づけ介入を行うことで,より理解志向の相互作用が生起し,課題の結果だけでなく,プロセスを重視した学習が促される可能性が示された。

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© 2022 一般社団法人 日本発達心理学会
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