2022 年 33 巻 4 号 p. 419-430
青年期以降に注目される自己愛の環境的規定因として,養育態度・行動が重視されている。理論的な仮説が3種類提示されており,実証研究も積み重ねられてきたが,これまで研究知見の整理はほとんどなされてこなかった。本研究では,自己愛と養育態度・行動の関連について,メタ分析による検討を行った。オンラインデータベースを用いて文献を検索し,相関係数(r)またはrに変換可能な統計量を報告している43論文(47研究)を収集したところ,自己愛と養育態度・行動の指標はそれぞれ多岐にわたっており,検討に際してまず指標の整理を行った。自己愛については誇大性と過敏性に大別した上で誇大性をさらにNarcissistic Personality Inventory及びそれ以外の測度に分け,養育態度・行動は温かさ,モニタリング,心理的統制,甘やかし・非一貫,拒否・無関心の5つに分類して検討を行った。自己愛の測度の別ごとに養育態度・行動との母相関係数を推定したところ,推定値は最大でも.2程度であり,自己愛や養育態度・行動の性質を考慮した上でも,自己愛の形成に対する養育態度・行動の直接的な関係を強調することはできないと結論づけた。この結果から,今後,複数の態度・行動の複合的な効果や間接的な効果,子どもが既にもっている自己評価の特徴との相乗的な効果など,養育態度・行動の直接的でない影響を検討する必要性が示唆された。